磐田市旧見付学校

ハイカラな雰囲気が漂う外観

歴史的価値の高さから国の史跡に指定

東名高速の磐田ICから5分、磐田駅からはバスで10分と交通アクセスのよい立地にある旧見付学校。校舎に一歩入るとタイムスリップした感覚、映画の世界に入り込んだ気分になる。校舎は1875年(明治8)8月に完成し、1922年(大正11)まで小学生が通っていた。児童数が増えて別の校舎が造られたが、旧見付学校は取り壊されずに今も当時の姿を残し、日本に現存する木造擬洋風小学校の校舎では最も古い。その歴史的価値から、建物北側に隣接する幕末の私設文庫蔵・磐田文庫とともに、1969年(昭和44)に国の史跡に指定された。校舎は木造5階建てで、今の時代に同じ規模で建設すれば1億円を超えるともいわれているが、当時はおもに地元住民からの寄付金で建設費を集めたという。見付は遠江の中心で「自分たちのまちは自分たちの手でつくる」という気概や誇りを持っていたことの現れだろう。建物の設計を担当したのは宮大工の伊藤平右衛門(のちの9代目・伊藤平左衛門)は、旧愛知県庁や招魂社(今の靖国神社)を設計したことでも知られている。

当時の授業風景を再現した教室

授業風景を再現。席に着き当時の授業を体験

校舎の1階にある教室は机と椅子が並べられ、当時の授業風景が再現されている。それぞれの机の上には石盤と石筆が置いてある。児童が板書する時に、鉛筆やノート代わりに使っていたもので、来館者は席に着き、石筆で字を書く体験もできる。2階には当時の学校生活に欠かせなかった資料が展示されているが、そのなかには卒業証書がある。自動的に学年が上がる現在の小学校と違い、当時は進級試験があったので、卒業証書の重みは今とは比べものにならなかったことだろう。小学校は4年間で卒業、その後は働きに出るため、小学校では商売に必要な計算や手紙・公用文といった社会で求められる知識を学んでいた。成績優秀者は飛び級が認められ、2年間で卒業する児童もいたという。

2階には卒業証書など貴重な資料を展示

3世代で楽しめる昔の遊びコーナー

3階には明治から昭和にかけての生活を知る資料が展示されている。囲炉裏や足踏みミシン、かまどやちゃぶ台など、当時の一般的な家庭を再現している。生活に不可欠だった農具もあり、昔の暮らしを想像することができるほか、糸車や石臼など当時の道具を実際に使うこともできる。部屋の奥にあるのは、昔の遊びを体験するスペース。メンコやけん玉、あやとりにお手玉など、平成より前の世代には懐かしいおもちゃが並ぶ。今の子どもたちにとっては新鮮で、親子3代で楽しむ来館者もいるそう。土・日曜は校舎の前で竹馬や竹で作った水鉄砲、竹とんぼやコマで遊べる。さらに上の4階と5階は展望スペースになっている。4階に関する詳しい記録は残っていないが、応接室や校長室に使われていたのではないかという。最上階の5階には太鼓が置かれており、児童の登校の合図や正午の時報の役目を担っていた。

3階では昔の一般的な家庭の生活を再現

3階の奥には昔の遊びを楽しめるスペース

4階は現在展望スペースに