六郷湧水群
奥羽山脈の湧水が60か所以上から湧き出す「日本の名水百選」
長い時間をかけて濾過された清らかな湧水
秋田道大曲ICから車で20分ほど。東西を奥羽山脈と出羽山脈が囲み、南北60kmにわたって広がる日本最大規模の横手盆地に位置する美郷町(みさとちょう)。ここは奥羽山脈を水源とする大小河川の扇状地にあるため、町内には古くから伏流水が湧き出しており、確認できているものだけでなんと126か所も。なかでも六郷エリアには半数以上の湧水地が集中しており、これらを総称して「六郷湧水群」と呼ばれている。かつて水量が豊富だった頃は「百清水」と称されていたが、湧水量が減った現在でも六郷エリアには60か所程度の湧水地がある。長い時間をかけて湧出する水は、年中通して水温が一定の清らかな軟水ということで、古くは江戸時代から地域住民の生活水として利用されてきた。飲料水としてはもちろん、野菜や果物を冷やす天然の冷蔵庫としても使われており、六郷の町を巡ると湧水を生活に利用する昔ながらの光景に出合うこともある。
かつての秋田藩主が茶の水に使った名水
江戸時代には当時の紀行家である菅江真澄も訪れた六郷湧水群。六郷エリアに集中する60か所以上もの湧水地にはそれぞれ名前と由来があり、そこに込められた歴史や伝記に思いを馳せながら巡るのも楽しい。最も有名な湧水地の1つが「御台所清水」で、その昔秋田藩主の佐竹義隆(さたけよしたか)公が鷹狩の際に訪れて、炊事やお茶の水として使用していたことから名付けられたという。ここは3つの水溜めに分かれており、いちばん広く丸いほうから水飲み場、茶碗など食器の洗い場、洗濯場へと水が流れていく。冷蔵庫や洗濯機などがなかった時代には、ここが住民共通の水場でありコミュニケーションの場であったことが想像できる。次に有名なのが美郷町内にある諏訪神社の西に位置し、周りをフジや杉などの木々で囲まれた「藤清水」。名前のとおりに清水の隣には美しい藤棚があり、5月の見頃の季節には紫色のフジの花が咲く棚のなかを歩くことも。諏訪神社の敷地内の庭園にも、静かにコンコンと湧き出す「諏訪清水」がある。
ニテコサイダーにも使われるニテコ清水
観光の際にぜひ訪れてほしいのが、蔵造りのニテコ名水庵の敷地内に湧く「ニテコ清水」だ。樹齢100年の大ケヤキに見守られ六角形の青い柵で囲まれた清水は、明治天皇がこの地を巡幸した際に御膳水(ごぜんすい)として差し出されたことでも有名。大正時代にはこの清らかな軟水を使ったニテコサイダーが商品化され、昔から変わらぬ味で、今も特産品として愛され続けている。時間があればぜひ湧水地を巡って六郷の住宅街を散策してほしい。町のいたるところに案内看板が設置されており、マンホールにも清水の方向が示されている。地元住民やガイドさんに道を聞きながら知らない町を巡ると、ちょっとした冒険気分が味わえて楽しい。住宅街のなかにある湧水地でおすすめなのが「ハタチや清水」。酒屋の敷地内に湧いており、お店の方に声をかけると見学もOK。夏場に訪れるとニテコサイダーが冷やされていて、購入して清水を見学しながら味わえる。
観光休憩所や観光情報センターを活用すべし
藤清水やキャペコ清水が集まる敷地には無料の休憩所があり、営業時間内に訪れると清水で淹れたお茶や抹茶、名水コーヒーなどをいただきつつのんびり。スタッフさんに道案内してもらったり、湧水地にまつわるお話しを聞いたりと情報収集の場にもぴったりだ。もっとじっくり散策を楽しみたいなら、六郷湧水群から車で10分ほどの国道13号線沿いに立つ「道の駅美郷(みさと)」へ。ここには観光情報センターがあり、予約するとガイドが湧水地を案内してくれるサービスがある。湧水群から山の方角へ10分ほど向かうと、奥羽山脈を眺めながら入れる露天風呂が人気の「六郷温泉あったか山」があり、全国屈指のカルシウムイオン含有量を誇る天然温泉を楽しめる。また美郷町にはラベンダー園があり、初夏の頃に2万平方メートルの広大な敷地に2万株ほどのラベンダーが咲く光景は圧巻。6月中旬から7月上旬はこちらのスポットも一緒に巡りたい。
スポット詳細
- 住所
- 秋田県仙北郡美郷町六郷 地図
- エリア
- 横手・湯沢・栗駒エリア
- 電話番号
- 0187840110
- 駐車場
- あり
情報提供: ナビタイムジャパン