香川県庁舎旧本館及び東館
戦後日本を代表する建築として評価される県庁舎
日本の伝統を感じさせるコンクリート建築
鉄筋コンクリート造8階建ての旧本館、3階建ての東館で構成される建物で、香川県に残る丹下建築としては、「船の体育館」の愛称で知られる旧香川県立体育館と並んで有名なものだ。建物だけでなく庭との調和もすばらしく、木造建築をイメージさせる柱と梁の組み合わせや手すり付きのベランダなど、日本の伝統的建築表現がコンクリートという近代的な素材によって生み出されているのが特徴だ。また、建物の中央にコンクリートの耐震壁を置く「コア・システム」が採用されていることもポイント。コア内部に階段やエレベーターなどを収めることで、小梁に沿った間仕切り自由な執務空間が生まれている。1960年(昭和35)に第1回BCS賞(建築業協会賞)を受賞、1998年(平成10)に「公共建築百選」に選出、1999年(平成11)に「DOCOMOMO(モダン・ムーヴメントにかかわる建物と環境形成の記録調査および保存のための国際組織)japan20選」に庁舎建築として唯一選ばれるなど、数々の受賞歴がある。2022年(令和4)には、戦後の庁舎建築としてはじめて、国の重要文化財に指定された。
芸術家たちの意匠に満ちた、開放的なロビー空間
全面ガラス張りの開放的な1階ロビーで出迎えてくれるのは、香川県出身の洋画家・猪熊弦一郎による陶板壁画「和敬清寂」。その壁画に見守られるように広がるロビーに並ぶ木製や陶製の椅子、木製棚、石テーブルなどは丹下研究室によるデザインだ。また、現在は香川県立ミュージアムにて展示されている当時の知事執務机や、今も使われている県庁ホールの舞台机や客席は、世界的なインテリアデザイナー・剣持勇によるもの。当時第一線で活躍していた芸術家たちの仕事を、そのままの姿で見ることができる。ロビーの北側には庁舎建設時の図面や現場写真、丹下から猪熊に宛てた手紙などの資料が展示され、作業に関わった人たちの苦労が伝わってくるようだ。これらの資料を見たうえで改めて庁舎や家具を見れば、細部にまで宿る芸術家たちの思いに触れることができるだろう。
県民に開かれたオープンスペース
1階ロビーと南庭、ピロティはすべてつながっており、誰でも自由に出入りして丹下建築のすばらしさに触れることができる。人々に憩いをもたらす南庭の設計は1957年(昭和32)の春から夏にかけて、丹下研究室の主担当である神谷宏治によって行われた。神谷は、従来の日本庭園に込められていた権力者の不老長寿への祈りというテーマを大きく転換させ、人々の豊かな暮らしを願う象徴として、池に豊穣のシンボルとしての庭石を設置。新たな時代にふさわしい広場を実現することを目指した。こうして生まれたおおらかな空間で、人々は建築や庭を眺め、憩いのひとときを過ごしている。県庁近隣には高松市美術館や香川県文化会館といった芸術に触れられる場があるので、建築やアートが好きな人は合わせて巡ってみてもいいだろう。
スポット詳細
情報提供: ナビタイムジャパン
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