散居村
自分の家の周りを農地とした独特の集落が広く一面に
農業の効率を上げる集落の形
散居村とは、民家が一定の間隔で散在する集落の形態のことで、一般的には散居村と呼ばれる。砺波平野には約220㎢という広大な土地に、「散居」という形容通り、7000戸を超える住居が散らばって建っている。これは、農家が自宅の周りを開墾して農地を広げ、稲作を行ってきたことで形づくられた。田植え後の水の管理、肥料や農薬の散布といった日々の手入れはもちろん、刈り取った稲を自宅の作業場へ運ぶ上でも、「近い」「すぐそば」ということは非常に効率的だ。21世紀の現代まで、特異な集落の形態が連綿と受け継がれてきた背景には、砺波平野で代々、稲作に従事してきた農家たちの合理的な思考がある。
防風林、燃料など多様な機能を持つカイニョ
散居村の農家の暮らしぶりがうかがえる施設を訪ねた。砺波市中心部にある「かいにょ苑」だ。1871年(明治4)に建てられた東向きの茅葺き住宅で、敷地の南西側には散居村のもうひとつの特徴である屋敷林がある。屋敷林はカイニョと呼ばれ、「タカ(土地)は売ってもカイニョは売るな」という言葉が地元に残るほど大切にされた。「かいにょ苑」でも、スギやアテのほか柿などの果樹が植えられている。冬の吹雪や夏の暑さ、台風から家を守るだけでなく、落ち葉は炊事や風呂焚きの燃料に、スギは改築用の建材に、果物は食料にとカイニョが生活に欠かせないものだった。カイニョで生活資材を確保・調達する知恵には感心する。
伝統的な間取りと構造
「かいにょ苑」として公開されている旧金岡家住宅は、材木商を営み、財を築いた2代当主・金岡庄平が現在の場所に建てた住まいだ。明治期以前の砺波平野で主流だった寄棟茅葺き屋根の民家で、雪国らしい豪壮な木組みが構造上の特徴となっている。積雪に耐える太い柱と梁(はり)、差鴨居を頑丈に組み上げたワクノウチ(枠の内)造りは、富山ならではの伝統工法である。冬の間、縄やむしろを編む作業場ともなった「ニワ」と呼ばれる土間などもあり、当時の農家建築の姿を色濃く残す。江戸時代末期の成熟した木造技術と上質な材が相まった、価値の高い建物だ。
散居村で栽培された米を買ってみよう
水田のなかに家々が点在する散居村。せっかくこの地を訪れたなら、散居村で育った米を食べてみたいもの。チューリップ公園やチューリップ四季彩館に隣接する「道の駅 砺波」内には、地元の特産品がそろう「となみ野の郷」があり、散居村産の米も販売されている。量り売りもしているので、グルメな人へのお土産にもぴったりだ。季節の野菜や加工品なども充実しており、散居村の食文化の一端に触れられる。
スポット詳細
情報提供: ナビタイムジャパン