駿府の工房 匠宿

1999年(平成11)に開業して以来の大規模なリニューアルを行った

「歴史と未来を結ぶ場所」伝統工芸継承の使命感

東名高速の静岡ICから7km、新東名高速の静岡スマートICからは9km。歌川広重の「東海道五十三次」に登場する宿場町・丸子(まりこ)に、「駿府の工房 匠宿」はある。やさしい木のぬくもりを感じさせながら、近代的な雰囲気も感じさせる外観。2021年(令和3)にリニューアルしたばかりの施設は「歴史と未来を結ぶ場所」をコンセプトに掲げている。エントランスには駿河竹千筋細工のランプシェードや藍染を飾り、静岡の伝統工芸を全面に出している。施設は豊かな山に囲まれたロケーションを生かした設計で、開放的な空間をつくり出す。徳川家康の隠居後に静岡浅間神社や久能山東照宮などを造営するため、全国から選りすぐりの職人を集めたことから根付いたとされる静岡の伝統工芸技術。伝統の継承を使命とする決意が施設から伝わってくる。

開放感のある施設には雰囲気のよい店が並ぶ

駿河竹千筋細工、藍染、漆など多様な体験

施設の最大の特徴は、「ものづくり体験」にある。体験メニューは駿河竹千筋細工、染めもの、木工、漆、陶芸など多岐にわたる。花器や風鈴、箸やアクセサリーなど、「国内最大級」の看板に偽りのない内容となっている。工房長は静岡にゆかりのある職人たち。全員が1970年代生まれと若いが、すでに国内外でさまざまな賞を手にしている。時間を忘れて自分で使う作品に没頭したり、大切な人を思いながら感謝の気持ちを込めて指先を動かしたり、それぞれの時を過ごせる。施設の思いは「工房を通じて後継者を育てること」。体験が始まる前に静岡の伝統工芸についての説明があるのは、「ただ作るだけではなく歴史を知ってもらいたい」、そして「体験を通じて将来の職人誕生につなげたい」という考えからだ。体験はいつでも受け付けているが、混み合うタイミングがあるため予約がおすすめ。

団体でも利用できる広々とした部屋でものづくりを体験

ものづくり体験で作った駿河竹千筋細工

静岡の逸品が見つかる　工芸品や土産も充実

セレクトショップでは、静岡を中心に全国の工芸品や土産物をそろえている。ギャラリー「Teto Teto」は民芸品からモダンな日用品までが並ぶ、ギャラリー兼生活用品店。漆の弁当箱や茶筒など、店頭に並ぶとすぐに売れる人気の商品も多い。食品を中心に静岡の選りすぐりのものを集めた「コトコトストア」では、土産にぴったりの逸品が見つかる。お茶や麩菓子など静岡の定番のほか、丸子紅茶やはちみつといった地元の名産も取り扱っている。

伝統工芸品を販売する「Teto Teto」

名店の味を楽しめるカフェと和菓子店

リニューアルでは飲食にもこだわった。カフェ「HACHI & MITSU」は地元のはちみつを使ったレモネード、レモンスカッシュ、フレンチトーストなどを提供している。飲み物は丸子紅茶を使用したメニューを中心に、子ども向けのソフトドリンクもある。ハンバーグやポークカツレツ、キーマカレーなど食事も充実し、ケーキやタルトも人気。店内には駿河竹千筋細工の照明を使うなど妥協がない。ギャラリー「Teto Teto」に隣接するのは「蓬きんつば ときや」。地元にあった和菓子の名店「吾作」の味を受け継ぎ、生蓬(なまよもぎ)を使った手作りの生地で甘さ控えめのあんこを包んで焼き上げている。

カフェの利用を目的に訪れる人も多い

和菓子好きには「蓬きんつば」がおすすめ

木製のおもちゃが充実したキッズ向け有料スペースも