四尾連湖

山裾に広がる深い森のなかに湖面が広がっている

標高850mにある山上の湖

四尾連湖(しびれこ)は標高850mという高い場所にある湖だ。その高さを知っただけで、この湖がある一帯の爽やかな空気を想像できる人も多いかもしれない。たとえば、箱根の山を登る箱根登山鉄道の終点、強羅駅があるのは標高541mの地点。四尾連湖の湖面は、それよりも遥かに高い場所にある。流出する川も、流入する川もない小さな湖は、昔は富士五湖とともに「富士内八海の霊場」のひとつに数えられていたというが、今日のように道路が発達する以前は、訪れる人さえまれだったろうこの湖の立地が、人々に畏敬の念を抱かせたのだろう。湖のある一帯は今日でも大規模な開発とは無縁で、いつ訪れても静かなたたずまいを見せる。昔話にうなずきたくなる、神秘的と呼びたくなる姿が今も残されている。

湖の周囲のサクラ、カエデ、クヌギは四季それぞれの美しさを見せる。バードウォッチングにも好適だ

遠い昔には雨乞いの地ともなった

一風変わったこの湖の名前は、かつては「志比礼湖」とも「神秘麗湖」とも記されていたといい、4つの尾を連ねた竜が住んでいる湖という伝説から、今の名が付けられている。今日のように豊富な情報がない時代には、ここに湖が存在することを知る人は、山に住む地元の人などごく限られていたことだろう。この湖が雨乞いの地であったという言い伝えもあるが、それはこの湖が、流れ込む川がなくとも決して枯渇することがないという、これも不思議な特性を備えているからに違いない。もちろん、現代においても湖の立地は昔と何も変わっていない。長い山道の先にある湖に着いたとき、誰もが大きな喜びを感じることだろう。そして、この湖が遠い昔には霊場とされていたこと、あるいは雨乞いの地になっていたことを深く理解できるはずだ。

湖に流入する川、流出する川はなく、湖の周囲は平坦。湖畔を散策できる

湖にはボートも用意され、家族で水遊びを楽しむことができる

湖畔には山荘が立ちオートキャンプ場も

現在の四尾連湖は、湖畔に2軒の山荘が建ち、キャンプ場、オートキャンプ場も整備されている。もちろん駐車場も用意されているが、駐車場によっては夜間は閉鎖されるものもあるので、自動車利用で現地を訪れるときには事前に利用方法を確認しておきたい。この湖の魅力はなんといっても自然の美しさだ。春の桜や、秋の紅葉の美しさは特筆に値し、都会では味わうことのできない季節感を感じ取ることができる。夏向きの施設として、カヤック、ボートなども用意されており、家族での水遊びもできる。観光地化された湖のように、都会のテーマパークを思わせる遊戯施設はなく、スピーカーで音楽を流し続ける飲食店もないが、この湖では、残された大自然に包まれる喜びを味わおう。

オートキャンプ場は湖畔より一段高い林のなかにある

キャンプサイトは十分な広さがある。自然との一体感を楽しもう

アクセス方法は事前に確認を

四尾連湖はJR身延線の市川大門駅、または市川本町駅から車で30分の距離にある。バスは週に3回、1日1往復のみの運転なのでレジャーでの使用は難しく、アクセス方法は事前に確認しておきたい。もちろん車利用が一般的な方法となるが、湖に続く道はカーブが続き、地図では読み取りにくいアップダウンも随所にあるので、先を急がずにゆっくりと走りたい。湖畔に立つ山荘は通年営業だが、多客期以外には臨時休業することもあるから、営業日についても確認をしておこう。大都会の施設ではないからキャパシティは大きくはない。利用の集中するゴールデンウィークなど混雑の予想されるときには、十分に計画を練っておくこと。湖周辺での宿泊を予定しているときは、確実に予約をしておきたい。

駐車スペースも十分。宿泊施設から近いのもうれしい

ハイキングコースも隣接。訪れた人がそれぞれの楽しみ方を見つけることができる