新潟縣護國神社

変化しない本質的なものを忘れず、変化を重ねるものも新たに取り入れる「不易と流行」を掲げている

戦没者慰霊から神賑行事まで時代に寄り添う

戊辰戦争の官軍戦没者をはじめ、大東亜戦争にいたるまでの新潟県にゆかりある7万9729柱のご英霊の「御霊(みたま)」が祀られている。その歴史は1868年(明治元)、明治維新の政争や戦乱に殉難した人々の慰霊祭を執り行ったことから始まり、現在は戦没者慰霊の他に冠婚葬祭などの人生儀礼を通した各種のご祈祷、さらにイベントなど時代の流れに合わせて新しいものも柔軟に取り入れている。2018年(平成30)には御創祀150年を記念した大改築を実施。雨の日も快適に参拝ができる総檜造りの御神門・回廊造営や演劇や、神賑行事を開催できる神楽殿の移設改修など、より快適で親しみやすい神社へと進化した。

御朱印スポットとしても人気で、通常の御朱印のほか月替わりの限定御朱印もある

歴史をしのび、平和を想う静寂のひととき

「ときわの森」とも呼ばれる16,800坪もの境内は、「日本の白砂青松100選」にも選ばれた美しい松林に包まれている。一の鳥居から御神門へと続く300mの参道は白い石畳で整備されており、両側には生い茂る木々とともに数々の慰霊碑が並ぶ。途中には、歴史ファン必見の「戊辰の役殉難者墓苑」がある。戊辰戦争において護國神社は西軍(朝廷軍)とのゆかりが深いが、「国を良くしようという思いは同じ」という考えのもと、西軍だけではなく東軍(幕府軍)の慰霊碑が建立されているのは、全国的にも非常に珍しい。神聖な空気のなかで歴史に触れ、改めて平和への思いを馳せてみるのも趣深い。

戊辰の役殉難者墓苑

いつでも、誰でも、心地良く参拝できる

御神門をくぐると、色鮮やかな一面の芝生と御社殿が目に飛び込んでくる。御神門と御社殿を結ぶ回廊は参拝空間をぐるりと囲むように造られており、総延長約200mにも及ぶ。大理石造りの菊と桜の御社紋のモニュメントが要所を飾る総檜の造りに、洗練された和の趣が心地良い。車いす用のスロープや手すりも備えており、境内のバリアフリー化や障碍者用トイレやベビールームも設置されているなど、あらゆる参拝者が安心して過ごせる空間づくりがうれしい。大拝殿の手前には「さざれ石」が鎮座しており、触ると安産につながるということで女性の参拝客から好評だ。境内にはシーフードダイニングのレストランも併設されている。

神賑行事などができるよう音響設備が備えられた神楽殿

全天候型の回廊は、歩くだけで自然とおごそかな気持ちが湧く

美しい松林に囲まれた新潟文学の道

日本海を望む松林のなかの遊歩道には、新潟にゆかりがある文学碑が並ぶ。「ふるさとは語ることなし」と刻まれた石碑は、新潟市出身の作家坂口安吾のもの。「私のふるさとの家は空と、海と、砂と、松林であった」と著書に書いた安吾は護國神社の近くで生まれ育っており、この護国神社から見える景色について書いていたのかもしれない。ほかにも新潟の砂浜を歌った作品といわれている北原白秋の童謡「砂浜」の石碑や、松尾芭蕉が詠んだ句が刻まれている石室もある。文人たちに影響を与えた新潟の自然を感じながら散策すると、作品への理解がよりいっそう深まり、趣深い旅になりそうだ。

野鳥の鳴き声や海風にそよぐ樹々のざわめきが耳に心地良い遊歩道

北原白秋が護国神社そばの寄居浜で見た情景を童謡にした『砂山』の石碑