羊山公園

高台に広がる花の名所から秩父市街と武甲山を一望する

秩父市の東側に位置する、丘陵地を利用した公園。桜をはじめとする季節の花々、新緑や紅葉を楽しめる自然豊かな園内は、市民の憩いの場となっている。特に芝桜が見頃の季節は多くの観光客で賑わう。

「芝桜の丘」から秩父のシンボル武甲山(ぶこうざん)を望む

武甲山のふもと、琴平丘陵にある羊山公園は、季節ごとに咲く花々の美しさで知られている。なかでも4月中旬から5月初旬にかけて、ピンク・赤・白など色鮮やかな芝桜が絨毯を敷きつめたように大地を埋め尽くす景色は有名。また桜の名所でもあり、春はソメイヨシノやしだれ桜、八重桜をはじめ、およそ1000本が咲き誇る。晩秋には十月桜がつぼみをほころばせる。最寄り駅のひとつ、秩父鉄道の「御花畑駅(おはなばたけえき)」は羊山公園にぴったりの名称で、駅名の由来はわからないそうだが、2009年(平成20)から「芝桜駅」の副駅名がつけられている。

約1万7000千平方メートルの広大な敷地に40万株以上の芝桜が植えられた「芝桜の丘」

西武秩父駅や御花畑駅から歩いて羊山公園へ向かうと、ゆるやかな上り坂の途中に「牧水の滝」がある。小さな人工の滝で、明治生まれの歌人、若山牧水(わかやまぼくすい)が秩父を詠んだ歌碑が置かれている。牧水はここから飯能へと歩いて旅したそうだ。

若山牧水の歌碑(写真右)。この上に「牧水の滝」と呼ばれる小さな滝がある

その先で道を左折すれば、公園の北側「見晴しの丘」へ。市街と秩父の山々を見渡せる展望スポットだ。春は桜のお花見スポットに、冬は「秩父夜祭」の花火の打ち上げ場所になる。もともと羊山公園は、日比谷公園や明治神宮の設計をした「日本の公園の父」本多静六博士が1936年(昭和11)に自然を生かした公園という思想で設計したもの。当時は「秩父公園」という名称だったが、この見晴しの丘からの眺望も博士にとって設計の一部になっていたに違いない。

秩父を舞台にしたアニメ、通称『あの花』に登場して有名になった「見晴しの丘」

「見晴しの丘」から公園の南側へ行くには、自動車道路もあるが、徒歩なら尾根上の雑木林を通る遊歩道がおすすめだ。緑の息吹を感じながら歩いて行くと、「葛葉(くずは)稲荷神社」の真っ赤な鳥居が現れる。その先の「わんぱく広場」には木製アスレチック遊具が置かれ、子どもたちが元気に遊びまわっている。

木立のなかにひっそりと鎮座する「葛葉稲荷神社」

さらに、桜が植えられた「芝生広場」を過ぎた先にあるのが「ふれあい牧場」と「芝桜の丘」。このあたりには戦前にめん羊(羊毛を取るための羊)の牧場があり、それが由来で戦後に羊山公園と改称したそうだ。「ふれあい牧場」はその名残で、羊のフワフワの毛に触れると子どもたちに人気。牧場は琴平丘陵ハイキングコースの入り口にあたり、ベンチでハイキング客が休息をとる姿も。ここから雑木林の尾根道を歩いて、秩父礼所26番円融寺の岩井堂などを通り、秩父鉄道の影森駅まで2時間ほどのハイキングを楽しめる。

「ふれあい牧場」では日本コリデール種の羊が飼育されている