木蝋資料館上芳我邸

歴史的建造物

往時の木蝋産業を今に伝える国指定重要文化財

かつて製蝋で財をなした豪商の屋敷を「木蝋資料館上芳我邸(もくろうしりょうかんかみはがてい)」として公開。広大な敷地には10棟の国指定重要文化財がある。木蝋生産の歴史や工程を紹介する展示棟もあり、豪商の暮らしと製蝋業について知ることができる。

重厚な漆喰の壁と名家らしい風格が漂う木蝋資料館上芳我邸} 重厚な漆喰の壁と名家らしい風格が漂う木蝋資料館上芳我邸

木蝋の生産で栄えた内子の町並みで中核的な施設

江戸時代後期から明治時代にかけて木蝋(もくろう)の生産で栄えた内子町。「八日市・護国地区」には、伝統的な造りの町家や豪商の屋敷が今も軒を連ね、当時の面影を残している。町全体での保存運動が実り、1982年(昭和57)には、四国で初めての国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された。そんな四国を代表する歴史情緒あふれる内子の町並みの中核的な施設が、「木蝋資料館上芳我邸」だ。国内最大規模の製蝋業者だった本芳我家の筆頭分家・上芳我家の屋敷を内子町の管理運営で公開している。敷地内には、1894年(明治27)に上棟された主屋、炊事場、仕舞部屋および便所・産部屋、離座敷、風呂場・便所、釜場、出店倉、物置、土蔵、離部屋の10棟が現存。そのすべてが国の重要文化財に指定されている。また、1995年(平成7)に整備した展示棟では、木蝋生産の工程の模型や、重要有形民俗文化財に指定された「内子及び周辺地域の製蝋用具1444点」の一部を展示している。

晒場(さらしば)だった庭からの眺め。写真左から釜場、主屋、炊事場} 晒場(さらしば)だった庭からの眺め。写真左から釜場、主屋、炊事場

最盛期には日本一の生産量を誇った内子木蝋の歴史

内子の製蝋業は、1716〜1736年(享保年間)以降、大洲藩が殖産興業のため櫨蝋(はぜろう)の生産を推奨したことに始まる。その後、本芳我家初代・弥三右衛門(やざえもん)が独自の晒し技術「伊予式蝋花箱晒法(いよしきろうばなはこさらしほう)」を開発したことにより、生産量と品質が向上。日本有数の産地となった。明治中期の最盛期には、内子市街地の製蝋業者は23軒にのぼり、生産量は日本の総生産量の約3割を占めたと推定される。生産された木蝋は、肱川の支流小田川の水運で肱川河口に運ばれ、さらに瀬戸内海を汽船で神戸や大阪へと運ばれて、海外にも多く輸出された。大規模な製蝋業者は、白蝋生産を専業で行い、住宅の付近に生産施設や蝋を晒す広大な土地を設け、多くの職人を雇い入れて木蝋生産に励んだ。町内第2位の生産量を誇った上芳我家も例外でなく、最盛期には20人程度の従業員を抱えていたという。しかし、大正期に製蝋業が衰退すると施設も姿を消し、現在までに住宅や木蝋生産施設、敷地を往時のまま遺しているのは全国でも上芳我家のみ。上芳我家は、製蝋業とそれによって栄えた内子の人々の暮らしを物語る、重要な遺産なのだ。

木蝋はハゼノキの実から採る蝋のこと。蒸して搾った生蝋(きろう)は和蝋燭や鬢付け油に、漂白した白蝋(はくろう)は光沢剤や化粧品などに使われた} 木蝋はハゼノキの実から採る蝋のこと。蒸して搾った生蝋(きろう)は和蝋燭や鬢付け油に、漂白した白蝋(はくろう)は光沢剤や化粧品などに使われた

多くの従業員を抱えていたため炊事場も大きい。かまどや洗い場など昔の炊事場の姿がよく残っている} 多くの従業員を抱えていたため炊事場も大きい。かまどや洗い場など昔の炊事場の姿がよく残っている

豪商の暮らしぶりがわかる家屋も見学できる

敷地面積4327平方メートル(1300坪)の広さを誇る上芳我邸内へ入ると、正面に受付がある。左手に主屋、奥に離部屋や木蝋資料展示棟があり、中央に庭園、右手に製蝋作業場の釜場や出店倉などが並ぶ。上芳我家住宅と木蝋資料展示棟のみ有料で、無料ゾーンには自由に出入りできる。順路はないので、広大な邸内を探検するように見学しよう。土蔵造の主屋は、旧街道側の2階に虫籠窓、1階に出格子が見られるほか、製蝋作業場に面した南面は浅黄色を帯びた漆喰壁で、腰を海鼠壁としている。これらは内子の伝統的な商家のたたずまいである。主屋1階の客座敷から、中庭を横目に仕舞部屋、産部屋と続く渡り廊下を歩いて広い炊事場をのぞけば、上芳我家の繁栄ぶりがよくわかるだろう。主屋の2階も見逃せない。座敷とする計画だった2階は、建設途中で止まったまま現在にいたっているため、大きな屋根を支える立派な小屋組や小屋梁からぶら下がる吊束が見られるのだ。ここでは、上芳我家の建物の特徴や、文化財修理の方法、建物創建時および平成の大修理に携わった職人たちの匠の技を紹介する展示も行われている。さらに天井裏に上がって、小屋組をより間近に見ることもできる。

中庭を囲んで部屋を設け、回廊で行き来した} 中庭を囲んで部屋を設け、回廊で行き来した

2階は間仕切りや造作が造られないまま現在にいたっている} 2階は間仕切りや造作が造られないまま現在にいたっている

木蝋生産の工程も人々の暮らしもわかりやすく紹介

邸内の奥に設けられた木蝋資料展示棟では、木蝋生産の工程を模型や映像でわかりやすく紹介している。また、かつて製蝋業が盛んであった内子や周辺地域から収集し、1991年(平成3)には重要有形民俗文化財に指定された「内子及び周辺地域の製蝋用具1444点」の一部を展示している。木蝋の生産工程に関わるものだけでなく、儀式用具など木蝋に携わる人々の生活に関わる資料も含まれているので、木蝋生産で栄えた内子の町全体を知る足がかりとなることだろう。木蝋資料館上芳我邸にはほかにも、四季を感じる美しい庭園や、土蔵を利用した休憩所「cafeくら」もある。製蝋業への理解を深めに、ひと休みしに、ぜひ訪れてみてほしい。

木蝋生産工程を模型や映像でわかりやすく紹介している全国屈指の木蝋資料展示棟} 木蝋生産工程を模型や映像でわかりやすく紹介している全国屈指の木蝋資料展示棟

土蔵にある「cafeくら」。無料ゾーンなので気軽に立ち寄れる} 土蔵にある「cafeくら」。無料ゾーンなので気軽に立ち寄れる

スポット詳細

住所
愛媛県喜多郡内子町内子2696 map map 地図
エリア
内子エリア
電話番号
0893442771
時間
9:00-16:30
休業日
年末年始(12/29-1/2)
料金
【屋敷内 入館料】
[大人]500円
[小人]250円

【庭側】
無料
駐車場
なし
※護国駐車場をご利用ください
クレジットカード
可(VISA、MasterCard、JCB、AMEX、銀聯、DISCOVER、Diners Club)
電子マネー/スマートフォン決済
可(PayPay)
Wi-Fi
あり(内子フリーWi-Fi、えひめFree Wi-Fi)
コンセント口
なし
喫煙
不可
英語メニュー
あり
平均予算
【昼】1-1,000円
滞在目安時間
30-60分
車椅子での入店
可(無料ゾーン一部のみ)
乳幼児の入店
ペットの入店
可(無料ゾーンのみ)
雨の日でも楽しめる
はい

情報提供: ナビタイムジャパン

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クチコミ

  • 製蠟業の繁栄を伝える
    3.0 投稿日 : 2022.06.06
    内子駅から徒歩20分ほど。入場料500円。内子座、商いと暮らし博物館とのセット券は900円。国内最大規模の製蠟業者だった本芳我家の筆頭分家・上芳我家の邸宅。本家同様に製蠟業を営んでいた。通りに面して主屋があり、その裏にある中庭を取り囲むようにして炊事場、風呂場、離座敷、仕舞部屋などがある。敷地内に残る10棟の建物は国重要文化財。主屋(1894年築)は3階建で、屋根の大棟の両端に付けられた鴟尾...
  • 丁寧な資料と説明
    4.0 投稿日 : 2021.02.13
    木蝋で栄えた内子の街ですが、その木蝋がどうやってできるのか、実物がどんなものか、を知ることができます。たくさんの部屋に広い厨房など、栄えていた時代の面影を感じられる建物の構造もまた一興です。離れの資料館もジオラマを使っていろいろと説明がされていますし、お庭も広く、思った以上に見応えのある資料館でした。
  • 広大!
    5.0 投稿日 : 2021.01.14
    入り口は狭いですが、広大です!奥の資料館は、めちゃめちゃお金がかかってると思います。自動ドアで、フローリングは、床暖房が入っていました。入場料から考えて、在勤対策ではないでしょうか?資料館としても素晴らしく、興味深いです。中庭の景観も素晴らしいです。地元の親子は、ちょっとこの子の勉強に見せてと無料で入場していました。

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