鰐淵寺

寺院

紅葉名所で知られ、スピリチュアルな山寺風情が漂う名刹

紅葉名所として知られる鰐淵寺(がくえんじ)は、古くから知られた修験の地。山寺らしい風情を漂わせ、森閑とした境内では、隆盛を誇った往時の面影がしのばれる。かつて修験僧たちが滝行をした浮浪(ふろう)の滝は必見だ。

長い石段の上に根本堂が立つ。11月のシーズンには石段が紅葉のトンネルとなる} 長い石段の上に根本堂が立つ。11月のシーズンには石段が紅葉のトンネルとなる

紅葉シーズン以外の季節にも訪れてみたい

島根半島の深い山中にたたずむ鰐淵寺は、山陰屈指の紅葉名所として知られる。渓流沿いの参道や本堂への石段が、彩りも鮮やかな紅葉のトンネルとなり、毎年11月の「紅葉まつり」のシーズンには県内外から多くの参拝客が訪れる。しかし、それ以外の季節には訪れる人も少なく、寺は森閑としたたたずまいを見せる。自然に抱かれ、谷の瀬音も涼やかに、空気も澄みわたり、境内を取り巻く一帯が幽玄な世界に包まれる。由緒も歴史も出雲で随一の名刹ではあるが、門前に茶店の賑わいがあるような「いわゆる観光寺院」ではない。鰐淵寺は、「スピリチュアルな山寺風情」を存分に味わえる全国的にも数少ない寺のひとつだ。島根半島の北側という観光ルートからはずれた行きにくい場所にあり、険しい山道を上り、たどりつくのもひと苦労だが、だからこそわざわざ訪れる価値がある。

鰐淵寺川のせせらぎのかたわらに立つ本坊(右手)には、立派な御成門(おなりもん)がある} 鰐淵寺川のせせらぎのかたわらに立つ本坊(右手)には、立派な御成門(おなりもん)がある

飛鳥時代の創建で、歴史は法隆寺より古い

「浮浪山(ふろうざん)鰐淵寺」の創建は594年(推古2)という。智春上人が「浮浪の滝」に祈って推古天皇の眼病が平癒したことから、勅願寺として建立されたと伝わる。飛鳥時代、聖徳太子が推古天皇の摂政となった時期で、607年(推古15)創建の法隆寺よりも古いことになる。寺名は智春上人がそこで修行した際、滝つぼに落とした仏器を、鰐(わに)がえらに引っ掛けて奉げたという言い伝えに由来する。「鰐」とは神話に登場するワニザメのことだ。智春上人が修行した浮浪の滝には蔵王堂があり、ここが日本古来の「蔵王信仰」による修験道の行場だったことを物語る。平安時代には修験の聖地として栄え、平安後期の「今様(いまよう)」を集めた歌謡集である『梁塵秘抄(りょうじんひしょう)』でも「聖(ひじり)の住所(すみか)」として謡われている。

深山幽谷の趣がある浮浪の滝の背後の岩窟に、神秘的なたたずまいで蔵王堂が立つ。本坊から山道を約15分登った谷間にあり、武蔵坊弁慶も滝に打たれて修行したと伝わる} 深山幽谷の趣がある浮浪の滝の背後の岩窟に、神秘的なたたずまいで蔵王堂が立つ。本坊から山道を約15分登った谷間にあり、武蔵坊弁慶も滝に打たれて修行したと伝わる

堂々たる構えの根本堂は吹き放ちの古様の様式。千手観音菩薩と薬師如来(いずれも秘仏)を本尊とする} 堂々たる構えの根本堂は吹き放ちの古様の様式。千手観音菩薩と薬師如来(いずれも秘仏)を本尊とする

大社造の本殿と天台の修行道場である常行堂をもつ摩陀羅(またら)神社} 大社造の本殿と天台の修行道場である常行堂をもつ摩陀羅(またら)神社

ありし日の面影を残す境内は「国の史跡」

鰐淵寺には弁慶伝説も残るが、平安時代以降に天台宗の寺となり、11世紀後半には比叡山延暦寺の勢力下におかれ、12世紀後半に本格的な寺院「浮浪山鰐淵寺」として成立したという経緯を考えれば、まんざら荒唐無稽な話でもない。鰐淵寺で修行する弁慶が鳥取県の大山寺(だいせんじ)からひと晩で持ち帰ったと伝わる釣鐘は、国の重要文化財になっている。そして毎年4月最終日曜には、「武蔵坊弁慶まつり」が開催される。鰐淵寺は中世に最盛期を迎え、多くの僧房を構えて繁栄した。千手観音菩薩を本尊とする北院と薬師如来を本尊とする南院に分かれていたが、室町時代に両本尊を祀る根本堂を創建し、両院が統一された。近世以降に寺勢は衰えたが、今なお境内は往時の姿をとどめ、江戸時代の伽藍建築や多数の寺宝を蔵している。また発掘調査の結果、往時の繁栄を物語る遺構や遺物がよく残ることがわかり、2016年(平成28)に鰐淵寺境内が「国の史跡」に指定された。

この釣鐘は広島の平和の鐘の作者・香取正彦氏による、弁慶の釣鐘をほうふつとさせる2代目} この釣鐘は広島の平和の鐘の作者・香取正彦氏による、弁慶の釣鐘をほうふつとさせる2代目

歴史と由緒を知って訪れてみたい

狭い山道を上り詰めた駐車場から渓流沿いに参道を進み、仁王門をくぐれば、橋を渡った対岸に本坊がある。その先、根本堂へと長い石段が続く。石段の左右は中世に大伽藍を誇った遺構、数々の堂宇が立ち並んでいた場所で、隆盛を誇った往時がほうふつされる。根本堂のある山を隔てた谷間に、神秘的な姿を見せる蔵王堂と浮浪の滝がある。いずこも心に響く景色だが、歴史と由縁を知ったうえで訪れたなら、ありし日がしのばれ感慨もひとしおだろう。また、鰐淵寺へのアプローチの途中、出雲平野側の出雲市平田にはノスタルジックな町並みが残る「木綿街道」もあるので、あわせて旅をするのもおすすめだ。

本坊から根本堂への石段道は、かつて塔頭が立ち並んでいた面影を残す} 本坊から根本堂への石段道は、かつて塔頭が立ち並んでいた面影を残す

本坊の手前の渓流沿いに立つ仁王門。車は第一駐車場に。駐車場から仁王門まで川に沿って徒歩10分。清流と緑が心地よい} 本坊の手前の渓流沿いに立つ仁王門。車は第一駐車場に。駐車場から仁王門まで川に沿って徒歩10分。清流と緑が心地よい

スポット詳細

住所
島根県出雲市別所町148 map map 地図
電話番号
0853660250
時間
8:00-17:00(入山最終受付16:15)
休業日
無休
料金
[入山料]大人500円、中・高校生300円、小学生200円
駐車場
あり(66台)
クレジットカード
不可
電子マネー/スマートフォン決済
不可
Wi-Fi
なし
コンセント口
なし
喫煙
不可
滞在目安時間
30-60分
車椅子での入店
可(一部散策可)
乳幼児の入店
ペットの入店
不可

情報提供: ナビタイムジャパン

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クチコミ

  • とんでもない寺です!気をつけて!
    1.0 投稿日 : 2021.11.21
    家族が本日、訪れたました(中には入っていないのです。散策道から出て来ただけです)が、寺の関係者?の男女が出てきて、いきなりお金を請求され、口汚く罵られたようです。それが寺の人間とは呆れるばかり。気分が悪いし、まともな人間とは思えないので、もう諦めてお金を払ったら、その前に通り過ぎた数人もグループなのでは?と言われ、その人達の分も払え!と言い出す始末。恐怖さえ感じる!!何も知らずに訪れたら(通っ...
  • 紅葉
    2.0 投稿日 : 2020.11.23
    ネットに今日の日付で見頃と書いてかったのでわざわざ来たのに、紅葉はもう終わってました。紅葉目的で来て、入場料500円の価値は無い。入り口の看板にも、見頃との表記はおかしい。正しい情報を表記すべきです。
  • かつては修験道の霊地
    4.0 投稿日 : 2019.12.06
    神々が集う出雲の国出雲大社の東方の旅伏山中にある古刹。推古2年信濃の国の智春上人が建立した歴史ある寺、平安時代末期には修験道の霊地として知られ室町時代まで栄えていたそうですが今はひっそりと佇んでいます。武蔵坊弁慶も修行したと伝わります。現在は山陰一の美しい紅葉で知られています。その時期を外すと寂しい静かな境内です。紅葉には早くて残念でしたが幽玄な境内が素晴らしかったです。

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アクセス

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最寄り

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