丹沢湖

1977年(昭和52)に完成した世附大橋は「かながわの橋100選」に選出されている

多目的ダムの完成とともに出現した湖

神奈川県山北町にある丹沢湖は、1978年(昭和53)に誕生した人造の湖だ。神奈川県の西北部を流れる酒匂川の支流となる玄倉川、世附川、中川川の3つの川が合流する場所に、発電、取水、治水などを目的としたダムが建設されたことで丹沢湖ができあがった。現在は湖畔にさまざまな設備が造られ、カヌー、フィッシング、サイクリングなどのアウトドアライフ、家族連れでのピクニックに好適なフィールドとなっている。湖は造られた経緯もあって東、北、西の3方向に広がる独特の形をしており、長く延びる湖畔の道を生かして、マラソン大会も開催されている。湖の周囲には西丹沢の穏やかな姿の山が連なり、都会の喧騒とは無縁の静けさが漂っている。

丹沢湖は三方に細長く延び広がっている

200戸を超える民家が湖底に沈んだ湖

丹沢湖を誕生させるきっかけとなったダムは、建設計画の当初には「酒匂ダム」という仮称がつけられていたが、ダムの完成によって湖底に沈むことになる三保村の名前にちなんで「三保ダム」へと名称が変更されたという経緯がある。三保村は世附川沿いなどに200戸余りが軒を連ねる静かな山間の村だった。湖畔には、水没した世附地区で1973年(昭和48)頃まで使われていた民家を移転復元した「三保の家」を見ることもできる。できあがった湖は面積218万平方メートル、総貯水量6490万㎥という大きなもので、神奈川県の水瓶の役割も果たしている。三保ダムは95mの堤高を備える、これも規模の大きなもので、湖の南側には田ノ入発電所が建てられた。発電所に隣接してダム広場公園が造られ、公園内にはダムのミニチュアが設置されていて、ダムと湖の概要を知ることができる。

「三保の家」は見学無料。内部には水没前の風景写真なども展示

アウトドアライフを楽しむ施設も充実

現在の丹沢湖は、カヌー、ボート、SUP(スタンドアップパドルボード)、釣り、サイクリングなど、さまざまなレジャーを気軽に楽しむことができるアウトドアライフに格好のフィールドとなっている。湖畔に立つ「丹沢湖記念館」では丹沢湖、あるいは丹沢山地の歴史、自然を紹介。あわせてアート作品の展示なども行われている。また、湖畔には宿泊施設、飲食店、お土産ものを扱う売店もそろっている。アウトドアの世界を満喫したいならばキャンプ場の利用も楽しい。湖の周辺、あるいは川沿いにはいくつものキャンプ場、オートキャンプ場が造られている。これらの施設は湖の周囲の広い範囲に点在し、自然の景観が壊されていないことが丹沢湖の魅力となっている。幾つもの施設をまわって、自分だけの楽しみ方を見つけよう。

「丹沢湖記念館」の2階は写真展や絵画展が開かれている

漬け物、菓子、お茶など丹沢の名産が売られる「丹沢湖記念館」1階

近隣の温泉にも足を延ばしてみたい

丹沢湖へのアクセスは、小田急新松田駅からバス利用が好適だ。このバスは途中で御殿場線谷峨駅も経由するので、JRを利用してのアプローチもできる。バスの便数は多くはないので、事前にダイヤを確認しておきたい。車利用であれば、東名高速大井松田ICから30分の距離。途中から道が狭くなるので、慌てることなく走ろう。湖の北およそ4kmの場所にある中川温泉は「信玄公の隠し湯」といわれる秘湯。ここに宿を取り、ゆっくりと一夜を過ごすのも楽しい。また湖の周辺からは西丹沢の山に続くハイキングコースも延びている。ただし、標高のわりには地形が急峻なのが丹沢の特徴で、ハイキングを楽しむのであれば、ゆとりのあるプランを立てておきたい。