ヴェルニー公園

公園/緑地

バラの花と軍艦を眺めつつ、近代日本のルーツを横須賀でたどる

横須賀港に面したフランス庭園様式の公園で、見事なバラ園で有名。軍港とフランスという意外な取り合わせの理由は、園内の2つの博物館で明かされる。文明開化を象徴する旧製鉄所を知り、近代日本の夜明けを振り返ろう。

バラの見頃は例年5月中旬と10月中旬。5月と10月の開花期にあわせて「ローズフェスタ」が開催される} バラの見頃は例年5月中旬と10月中旬。5月と10月の開花期にあわせて「ローズフェスタ」が開催される

軍艦や潜水艦が目の前に停泊する公園

アメリカ海軍基地と海上自衛隊横須賀地方総監部のある横須賀港に面し、JR横須賀駅前から大型ショッピングモール「コースカベイサイドストアーズ」まで、約500ⅿにわたって細長く延びている。園内には北端に「ヴェルニー記念館」、南寄りに「よこすか近代遺産ミュージアム ティボディエ邸」と2つの博物館があり、花壇、噴水、あずまや、時計台、戦艦「陸奥」の主砲、正岡子規の文学碑、ペリーの黒船の操舵輪をイメージしたサイクルスタンドなどが点在する。フランス式花壇など各所に合計約1300株のバラが植栽されており、季節になると芳香に誘われて人々が集まる。観光客だけでなく、犬の散歩をする人、買い物のついでに横須賀駅まで歩く人、マニアにも人気の公園だ。かつて静かな漁村だったこの地が、幕末と明治維新で一躍全国の注目を集め、文明開化の象徴的な存在となって大都市に発展するまでの近代史を見て行こう。

海沿いにはガス灯を模した街灯とベンチが設置されていて、巨大な艦船の目の前に穏やかな日常が繰り広げられている} 海沿いにはガス灯を模した街灯とベンチが設置されていて、巨大な艦船の目の前に穏やかな日常が繰り広げられている

ブルターニュ地方の家屋を模した記念館

JR横須賀駅は、市街の中心である京急横須賀中央駅から離れているが、一度は利用してみたい珍しい駅。大正時代の面影を残すレトロな駅舎で、階段がまったくなく、1番線もない。駅舎の正面にはカモメと錨のマークが掲げられ、出るとすぐにアメリカ海軍の軍艦や自衛艦が目に飛び込んでくる。こんな駅はめったにないだろう。軍艦に向かって歩くとヴェルニー公園に入る。フランス風の洋館は「ヴェルニー記念館」。ヴェルニーは、徳川幕府の招きでフランスから来日した27歳の造船技術者だ。幕末に横須賀製鉄所(完成後に造船所と改名)を建設し、明治維新後も洋式灯台(第1号は横須賀市の観音埼灯台)の建設、レンガの製造、造船技術者の養成など日本の近代化に大きく貢献した。館内には、横須賀製鉄所で船の部品を作るために使われていたスチームハンマー(国指定重要文化財)などが展示され、窓からは製鉄所のあった場所、アメリカ海軍横須賀基地を一望できる。

記念館の前には、戦後に瀬戸内海から引き揚げられた横須賀生まれの戦艦「陸奥」の41cm主砲が置かれている} 記念館の前には、戦後に瀬戸内海から引き揚げられた横須賀生まれの戦艦「陸奥」の41cm主砲が置かれている

幕府が消えても製鉄所の建設は進められた

公園の中央には小栗上野介忠順(おぐりこうずけのすけただまさ)とヴェルニーの胸像が並ぶ。小栗は幕府の遣米使節として渡米して造船所を見学。帰国後、勘定奉行を務め、ヴェルニーを招いて横須賀製鉄所建設を強く推し進めた。その12年前に鎖国を解いた幕府は、諸外国から船の修理工場建設を求められていた。当時の船は木造で(ペリーの黒船も黒い塗料を塗った木造船)、日本に着いた頃には傷だらけ。加えて、ペリー艦隊の来航に慌てた幕府は海軍の増強に乗り出し、洋式軍艦を輸入。その修理のためにも、部品も作れる製鉄所が必要だったのだ。

小栗とヴェルニーの胸像。小栗は当初アメリカに協力を打診したが、南北戦争中だったために断られたという} 小栗とヴェルニーの胸像。小栗は当初アメリカに協力を打診したが、南北戦争中だったために断られたという

こうして1871年(明治4)、最先端の機械と技術を導入した横須賀製鉄所が竣工。それまでの日本では見たこともないレンガ造りの工場が並び、西洋式の巨大な機械が巨大な船を造り出す。その光景に人々は驚き、諸国から見物人が押し寄せるようになってすっかり観光地化。港沿いには宿屋が軒を連ねたという。製鉄所ではまた、従業員の労働時間を制限し、日曜は休日とする、健康診断を実施するなど、日本初の画期的な制度も導入された。

日本遺産に認定されている「逸見(へみ)波止場衛門」。旧軍港の正門で、当時はこの正面に船着き場があり、軍港への船が往復していた} 日本遺産に認定されている「逸見(へみ)波止場衛門」。旧軍港の正門で、当時はこの正面に船着き場があり、軍港への船が往復していた

明治天皇も視察に訪れたというドライドック(水を抜いて船の修理をする施設)は今も現役。 横須賀で培った技術は、やがて多くの産業の近代化に貢献することになる} 明治天皇も視察に訪れたというドライドック(水を抜いて船の修理をする施設)は今も現役。 横須賀で培った技術は、やがて多くの産業の近代化に貢献することになる

日本の本州で最古級の洋館だったティボディエ邸

「よこすか近代遺産ミュージアム ティボディエ邸」は、横須賀製鉄所の副首長を務めたフランス人技術者ティボディエの官舎を再現した博物館。明治初期、港を見下ろす丘に建設された洋館を、2003年(平成15)に解体・活用したものだ。館内には旧ティボディエ邸の部材で復元したトラス工法の小屋組みや、耐火・耐震性に優れた木骨レンガの壁の一部を見ることができる。これらは旧ティボディエ邸の3年後に完成した世界遺産「富岡製糸場」でも採用されている。ほかにも横須賀の見どころを紹介するデジタルマップや、製鉄所で造られたレンガ、製鉄所から全国へ広まったメートル法などを紹介。明治時代へタイムトラベルできるシアターでは、愉快なCGキャラクターとアテンダントが約15分間のショーで楽しませてくれる。ペリー来航時に演奏されたという行進曲にも注目を。

フランス窓(観音開き)のティボディエ邸。バルコニーと軒が広いのは、日本の蒸し暑さ対策とのこと} フランス窓(観音開き)のティボディエ邸。バルコニーと軒が広いのは、日本の蒸し暑さ対策とのこと

館内の一角に再現された官舎の一部屋には、当時の雰囲気をイメージした調度品をしつらえてある} 館内の一角に再現された官舎の一部屋には、当時の雰囲気をイメージした調度品をしつらえてある

スポット詳細

住所
神奈川県横須賀市汐入町1-1 map map 地図
電話番号
0468456660
時間
[ヴェルニー公園]24時間
[ヴェルニー記念館]9:00-17:00
[ティボディエ邸]9:00-17:00(シアター上映時間は10:00-16:00)
休業日
[ヴェルニー公園]無休
[ヴェルニー記念館]月(祝の場合は翌平日)、年末年始
[ティボディエ邸]年中無休
料金
[ヴェルニー公園]無料
[ヴェルニー記念館]無料
[ティボディエ邸]無料(シアターのみ200円)※高校生以下無料
駐車場
あり(普通車大6台、大型バス7台)
※大型バスのみ8:30-17:30まで
※有料
クレジットカード
不可
電子マネー/スマートフォン決済
不可
Wi-Fi
なし
コンセント口
なし
喫煙
可(喫煙所のみ)
平均予算
【昼】1-1,000円
【夜】1-1,000円
滞在目安時間
60分
雨の日でも楽しめる
はい
備考
※電話番号はヴェルニー公園管理事務所に繋がります。
【その他問い合わせ先】
[ヴェルニー記念館]046-824-1800
[ティボディエ邸]046-827-7003

情報提供: ナビタイムジャパン

アニメスポット情報

ハイスクール・フリートのOVA前編「納沙幸子がピンチ!」冒頭の、納沙幸子とヴィルヘルミーナ・ブラウンシュヴァイク・インゲノール・フリーデブルクとの会話シーンに登場する。

※ナビタイム調べ

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