起雲閣

歴史的建造物

大正・昭和の文豪たちも愛した浪漫あふれる名邸

1919年(大正8)に別荘として築かれ「熱海の三代別荘」として親しまれた起雲閣。その後1947年(昭和22)に旅館として生まれ変わると山本有三、志賀直哉、太宰治など著名な文豪たちに愛された歴史あるスポットだ。

時代を越え100年以上愛され続ける起雲閣} 時代を越え100年以上愛され続ける起雲閣

築102年の和館で起雲閣の歴史に触れる

熱海駅からゆるやかな下り坂を進み徒歩約20分。温泉情緒あふれる街並みのなか、遠くには波音が聞こえる。玄関口にある表門は1919年(大正8)に創設され、薬医門(やくいもん)と呼ばれる造りとなっている。これは鎌倉時代末期-室町時代初期の武家や公家の屋敷などで見られた門式のひとつで、のちには寺社や城郭に使われるようになったという。現存する事例は少なく大変貴重なもの。しっかりと見学しておこう。館内を進むとまず日本家屋の美しさが際立つ本館が現れる。そのなかでもひときわ目をひくのは和館「麒麟・大鳳」の群青色の壁。旅館を開業した当初は石川県出身の桜井兵五郎が採り入れた「加賀青漆喰」と呼ばれる伝統的な技法で造られていた。現在はウルトラマリンブルーの顔料を吹き付ける技法にて塗り替えを行い当時の雰囲気を今に伝える。

薬医門。現在は瓦だが古い写真では檜皮葺(ひわだぶき)を使った姿も見られるそう} 薬医門。現在は瓦だが古い写真では檜皮葺(ひわだぶき)を使った姿も見られるそう

和館「麒麟・大鳳」。最初の持ち主内田信也が車いす生活の実母の静養場所として建てたため、当時は珍しいバリアフリーを採用} 和館「麒麟・大鳳」。最初の持ち主内田信也が車いす生活の実母の静養場所として建てたため、当時は珍しいバリアフリーを採用

四季の移ろいを楽しむ日本庭園を散策しよう

日本庭園の広さは3000平方メートルを誇り、池を中心に配し園路を設けた「池泉回遊式庭園」が用いられている。眺望を楽しむことはもちろん、散策も楽しむこともできる両面性を持ち、どこから見ても美しさを損なうことがないよう設計されているのが特徴だ。1階からの眺めもすばらしいが、2階からの眺めもおすすめ。1948年(昭和23)3月に太宰治と最期をともにした山崎富栄が2泊した「大鳳の間」からは、庭園の景色を俯瞰で見ることができ、1階とはひと味違った景色を楽しめる。窓を飾る大正ガラスは今では製造することも難しい貴重なもの。微妙なゆがみがなんともノスタルジックだ。そんな庭園の景色に癒やされ、ペンを走らせた文豪も少なくないだろう。

2階からの眺望も抜群。昔は窓から海を拝むことができたそう} 2階からの眺望も抜群。昔は窓から海を拝むことができたそう

さまざまな建築様式が織りなす圧巻の建築美

木造2階建ての洋館は2代目の持ち主、根津嘉一郎(ねずかいちろう)により1932年(昭和7)に完成。入ってすぐの「玉姫」はヨーロッパのデザインを基本に日本の神社仏閣に見られる建築様式・折上格天井(おりあげごうてんじょう)を用いるほか、中国風の彫刻など各国の文化を取り入れた一室となっている。併設のサンルームは鮮やかなタイル張りの床が特徴。1920年代にフランスを中心にヨーロッパで流行したアールデコを基調とし、天井はステンドグラスで覆われ、明るくやわらかな光が差し込んでいる。そのほか「金剛」に併設するローマ風浴室にはステンドグラスの窓やテラコッタ製の湯出口が当時のまま現存する。

写真奥がモダンな雰囲気漂う「玉姫」。サンルームには1枚1枚手作りする宮内庁御用達の泰山タイルが敷かれている} 写真奥がモダンな雰囲気漂う「玉姫」。サンルームには1枚1枚手作りする宮内庁御用達の泰山タイルが敷かれている

金剛にある「ローマ風浴室」。床は肌触りと滑り止めを考慮した木製タイルを敷いている。下から湯が湧き上がる構造も建設当時では珍しい} 金剛にある「ローマ風浴室」。床は肌触りと滑り止めを考慮した木製タイルを敷いている。下から湯が湧き上がる構造も建設当時では珍しい

起雲閣の歴史に触れたのちはノスタルジックな喫茶室でひと休み

起雲閣は2000年(平成12)には市の所有となり、文化と観光の拠点として熱海市指定有形文化財に認定。その歴史を後世に伝えるべく、曜日によってボランティアの案内人が歴史について教えてくれるのもうれしいポイント。「麒麟」には起雲閣の歴史を約3分で説明してくれる案内人が毎日常駐する。別途予約で館内をぐるりと一周案内する「スルーガイド(1グループ1000円※10名前後)」もおすすめ。館内は携帯・手持ちカメラでの写真撮影もOK。ノスタルジックな写真が撮れること間違いなしだ。受付横にある「喫茶室・やすらぎ」は旅館時代にはバーとして利用されていた場所。趣のあるカフェでゆったりとした時間を過ごしてみては。

「熱海紅茶-だいだいマーマレードを添えてロシアンティ風」450円。熱海の特産ダイダイを使用} 「熱海紅茶-だいだいマーマレードを添えてロシアンティ風」450円。熱海の特産ダイダイを使用

スポット詳細

住所
静岡県熱海市昭和町4-2 map map 地図
電話番号
0557863101
時間
9:00-17:00(最終入館16:30)
休業日
水(祝の場合は開館)、年末12/26-12/30
料金
【入館料】
[大人]610円
[中学生・高校生]360円
駐車場
あり(37台)
クレジットカード
不可
電子マネー/スマートフォン決済
不可
Wi-Fi
あり
コンセント口
なし
喫煙
不可
英語メニュー
あり
滞在目安時間
30-60分
車椅子での入店
乳幼児の入店
雨の日でも楽しめる
はい
備考
※ペットの入店は不可です(盲導犬の補助犬は除く)

情報提供: ナビタイムジャパン

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クチコミ

  • 落ち着いた雰囲気 歴史好き・文学史好き・建物好き・庭園好き・旅館の雰囲気好きに当てはまればオススメ
    5.0 投稿日 : 2022.08.23
    敷地内はかなり広いです。基本的には室内を見学するので、雨の日にも向いているでしょう。入口で靴を脱ぎ、貴重品以外の荷物を鍵付きのロッカーに預けます。100円で、荷物取りだすときにかえってきます。なんだか大げさだなとも思いましたが、大正時代からのガラスもあるので、不注意で割れたら大変だからということでしょう。チケットはまとめて支払いです。代表者が全員分払ってくださいとなりました。入口に女性スタッフが...
  • 和風、洋風、庭園と3種類の楽しみ方
    4.0 投稿日 : 2021.06.29
    熱海市役所に近い場所にある市指定の有形文化財。熱海の三大別荘の一つでもあり、昭和22年からは旅館として使われた。谷崎潤一郎、太宰治、山本有三や志賀直哉なども利用したそうで、前3人が一緒に写っている貴重な写真が展示されている。麒麟と呼ばれる和風建築は大正8年に「海運王」の内田信也氏が建て、その後、庭園整備と洋館建築を「鉄道王」の根津嘉一郎氏が行ったという。二人とも「その道の王」が関わっ...
  • 熱海
    4.0 投稿日 : 2021.05.09
    三大別荘の一つみたいで、なかなかに見応えがありました。風情もあり、歩いているだけでも十分楽しめます。

TripAdvisorクチコミ評価

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アクセス

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最寄り

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