名勝 天龍峡
折々の自然と奇岩断崖が織りなす峡谷美
多くの文人墨客に愛された景勝地
諏訪湖を水源とし、伊那谷を通り太平洋へと注ぐ天竜川。その流域、南北およそ2kmに広がるのが天龍峡だ。江戸時代にこの峡谷を訪れた儒学者の阪谷朗廬(さかたにろうろ)が、岩を砕く激流と高い断崖の景観に心を動かされて天龍峡と命名。以降、多くの文人墨客が噂を聞きつけ、この地に足を運んだという。そのなかのひとり、日下部鳴鶴(くさかべめいかく)は明治時代に書聖と仰がれた書道家。1882年(明治15)に訪れた際、特徴的な10の奇岩や淵を選び、それぞれに漢詩風の名をつけて「天龍峡十勝」と定めた。岩肌には彼の書を写してそれぞれの名を彫りつけてあり、川下りの舟上からはそのほとんどを眺めることができる。
「お散歩マップ」片手に名所巡り
自分のペースで巡りたい人は散策道から絶景を楽しもう。まずはJR飯田線の天竜峡駅前にある観光案内所で「お散歩マップ」を入手。今回はこのマップを片手に、一周約2kmのコースを巡ってみた。最初に着いたのは天龍峡十勝のひとつ「龍角峯(りゅうかくほう)」を正面から望む展望台。この巨大な岩は、天竜川の深渕に棲んでいた龍が昇天した際に残した龍の化身とも伝えられている。まさに天龍峡を代表する奇岩だ。次に向かったのは、スリルとともに美しい峡谷美を眺めることができる吊り橋「つつじ橋」。このほか52mの高さから峡谷を望む龍角峯上の「展望台」や「幸福の鐘」などを巡ることおよそ1時間。体はほどよい疲れを感じていた。
壮大な景色と峡谷の深さを川下りで体感
「山水画のような美しさ」と称えられる天竜峡の絶景を、もっと近くで楽しみたい人は迷わず「天竜ライン下り」を体験しよう。天竜峡駅から徒歩2分の天龍峡港から唐笠港まで約40~50分の舟旅。市内に川下りは2つあり、激流を下るダイナミックな「天竜舟下り」に比べ、こちらの「天竜ライン下り」は穏やかな流れをゆったり下るのが特徴だ。水面の高さから仰ぎ見る天龍峡十勝などの奇岩や大岸壁は迫力に満ちており、エメラルドグリーンの天竜川と相まって唯一無二の渓谷美を織りなす。途中、船頭による投網の実演や、運が良ければトンビへの「餌付け」が見られることもあり、新緑や紅葉、雪景色など四季の変化に富んだ風景が楽しめるのも魅力だ。
空中散歩ができる新スポットが登場
時間に余裕のある人は、2019年(令和元)11月に開通した「そらさんぽ天龍峡」にも足を延ばしてみよう。飯田市と静岡県浜松市をつなぐ三遠南信自動車道に架けられた「天龍峡大橋」の桁下にある遊歩道だ。川から80mの高さがあり、まさに空中散歩をするような感覚で天龍峡の絶景を眺めることができる。すぐ近くには飯田線の線路があり、タイミングが良ければ電車と川下りの舟が同時に見られることもある。吊り橋とは違い、揺れはほとんどなく、側面は防護柵に覆われているので、高いところが苦手な人や小さな子どもでも安心して楽しむことができそうだ。
スポット詳細
情報提供: ナビタイムジャパン