福沢桃介記念館

記念館

電力王福沢桃介の業績に触れる記念館

山深い木曽で、木曽川の激しい水流を利用し、大正6年からの10年間で7つの発電所を手がけ、大成功を収めた福沢桃介。福沢諭吉の娘婿である桃介の旧別荘を利用した記念館では、その功績を讃え、多くの遺品や資料が展示されている。

西洋の香りが漂う別荘。玄関横のサンルームは籐製の家具が置かれたおしゃれな空間} 西洋の香りが漂う別荘。玄関横のサンルームは籐製の家具が置かれたおしゃれな空間

発電所建設に尽力した桃介の偉業に触れる

水力発電事業の成功により「電力王」の異名をもつ福沢桃介の記念館。国道19号線沿いに位置する大正ロマンを偲ぶ桃介記念公園の一角にあり、福沢桃介とそのパートナーであった女優・川上貞奴(さだやっこ)の遺品や写真、木曽川水系の発電所建設や桃介橋に関する資料などを展示している。「一河川一会社主義」を掲げ、次々と事業を行ってきた桃介は、福沢諭吉の次女に婿入りしていたが、この別荘では貞奴とともに過ごしていた。ここを発電所へ赴く拠点とするかたわら、西洋文化が漂うこの別荘に政治家や外国人技師などを招き、豪華な宴も開かれていたという。2階部分は昭和時代に火事で焼失し、その後復元されているが、もとは1919年(大正8)に建てられたもの。自然の石を土台にしているのもユニーク。木曽の観光名所・妻籠宿から車で10分ほど。

日本の女優第1号といわれた川上貞奴と桃介。2人のロマンスはNHK大河ドラマ『春の波濤』でも描かれた} 日本の女優第1号といわれた川上貞奴と桃介。2人のロマンスはNHK大河ドラマ『春の波濤』でも描かれた

木曽の林業の歴史を知る「山の歴史館」

記念館の隣には、木曽の発展と林業との関係を紹介する「山の歴史館」がある。両館は渡り廊下でつながっていて、記念館へは「山の歴史館」入り口から入るようになっている。歴史館の建物は、皇室の所有する山林を管轄する旧御料局の庁舎を移築、復元したもの。1900年(明治33)に建てられた洋館で、玄関の柱の彫刻や、菊の御紋がデザインされた天井の通気口など、細部の造りが印象的だ。館内には、樹木の伐採に使われた道具や当時の写真などの展示がある。皇室の財産であった御料林は、伊勢神宮の式年遷宮などで使う御用材のために保護されており、特に檜やサワラなどの「木曽五木」は伐採が固く禁じられていた。明治になり、それまで生活のために利用していた山まで召し上げられた村人が、権利を取り戻す運動を起こしたのが「木曽御料林事件」。文豪・島崎藤村の小説『夜明け前』にも描かれており、山の解放に奔走する主人公は藤村の父がモデルといわれる。

長野県宝に指定されている「山の歴史館」。木曽御料林事件の資料も展示され、留置場も見ることができる} 長野県宝に指定されている「山の歴史館」。木曽御料林事件の資料も展示され、留置場も見ることができる

庭に展示されている森林鉄道の機関車は、南木曽町で木材の運搬に使用されていたもの} 庭に展示されている森林鉄道の機関車は、南木曽町で木材の運搬に使用されていたもの

木曽川に架かる桃介の名を冠した吊り橋

記念館の駐車場でもある天白公園から、記念館と反対側へ歩くとすぐに橋に出る。「桃介橋」と名付けられたこの橋は、全長248ⅿ、幅2.7ⅿで国内最大級の木製吊橋。読書(よみかき)発電所建設の資材運搬路として1922年(大正11)に完成した。役目を終えると住民の生活道路となり、やがて老朽化が進んで廃橋寸前になっていたが、1993年(平成5)に復元。現在は読書発電所施設の一部として国の重要文化財に指定されている。橋に3基ある主塔はアーチ型のコンクリート製で、それぞれの主塔からケーブルが張られたデザインは、19世紀末のアメリカの吊り橋によく似ているといわれる。中央の塔から川の中洲へ降りる石段があるのも珍しい。橋の上から見る木曽谷の景色は、藤村の『夜明け前』冒頭の一節「木曽路はすべて山の中」を実感できるだろう。

木曽の深い山々に囲まれて存在感を示す桃介橋。相場師であった桃介は、投資で得た莫大な資産を電力事業に注いだ} 木曽の深い山々に囲まれて存在感を示す桃介橋。相場師であった桃介は、投資で得た莫大な資産を電力事業に注いだ

橋の中央には、かつてトロッコレールが敷かれていた痕跡も復元されている} 橋の中央には、かつてトロッコレールが敷かれていた痕跡も復元されている

春の訪れとともにハナモモが満開に

4月中旬頃から記念館や桃介橋の周りはハナモモの花で彩られるが、このハナモモは桃介がドイツで購入してきた苗が始まりだ。ハナモモは1本の木に白、淡い桃色、濃い桃色の3色の花を付けるが、作家・神津カンナが桃介について研究した著作によると、ハナモモの白は発電所建設反対運動の鎮静化、赤は発電事業の成功、ピンクは自身の名の桃、桃介はこれらをイメージしてハナモモを気に入ったのではないかとある。ちなみに、発電所反対運動の中心的人物は島崎藤村の次兄だったそうだ。

桃介橋の下にも多くのハナモモが植えられている} 桃介橋の下にも多くのハナモモが植えられている

桃介が持ち込んだハナモモは初めに須原発電所に植えられ、その後、周辺の地域へと広がっていった。妻籠から昼神温泉郷へ続く国道256号線にはハナモモ並木が続き「はなもも街道」と呼ばれている。さらに昼神温泉郷や、その先にある「花桃の里」も全国的に有名なハナモモスポットだ。シーズン中に訪れた際はぜひ桃介を思いながらハナモモ観賞も楽しみたい。

桃源郷のような花桃の里(月川温泉)。全国から観光客が訪れ、静かな村がしばし賑わう} 桃源郷のような花桃の里(月川温泉)。全国から観光客が訪れ、静かな村がしばし賑わう

スポット詳細

住所
長野県木曽郡南木曽町読書2941-5 map map 地図
電話番号
0264574166
時間
9:30-16:30
休業日
水、12月-3月中旬(開館は3月中旬-11月末)
料金
[入館料]大人500円、中学生250円、小学生以下無料
駐車場
あり(30台)
クレジットカード
不可
電子マネー/スマートフォン決済
不可
Wi-Fi
なし
コンセント口
なし
喫煙
不可
平均予算
【昼】1-1,000円
滞在目安時間
30-60分

情報提供: ナビタイムジャパン

アクセス

map map 地図

最寄り

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