青森公立大学 国際芸術センター青森

展覧会会場となる展示棟は、上から見ると馬蹄状になっている。安藤忠雄氏の設計だ

森のなかで現代アートと向き合える特別な空間

青森は現代アートの宝庫である。青森市市制100周年事業として2001年(平成13)12月に開館した国際芸術センター青森(Aomori Contemporary Art Centre略称:ACAC)もそれを構成する現代アートの場のひとつだ。展示棟での展覧会や野外ステージでのインスタレーションなど、多彩なプログラムがシーズンごとに内容を変えて提供されている。立ち寄ったら、まずはACACの優美な建造物から鑑賞しよう。国際的な建築家・安藤忠雄氏が設計を担当している。八甲田山麓のダイナミックで起伏に富んだ自然地形を壊すことがないよう配慮され、森のなかに埋没するようにたたずむ建造物のテーマはずばり「見えない建築」だ。深く青い森を進んでいくと、やがて静謐な建物が姿を現す。

駐車場を出ると現れる『四季のアーケード』(安藤忠雄氏設計)。晴れた日には、太陽の光が地面に網目模様となって映し出され、冬になると雪のトンネルへと姿を変える

森を抜けると展示棟に到着。展示棟で開かれている展覧会は、無料で鑑賞できる

アーティストが滞在し、ここでアートを生み出す

メインの建物でもある展示棟は、アーティストの発表の場でもある。ACACの特徴はアーティスト・イン・レジデンス、つまりアーティストがここACACに一定期間滞在して、創作活動を行う点にある。ここで制作された作品が、展示棟で発表されているのだ。深い森のなかで制作に没頭したアーティストたちが一体どんな作品を生み出したのか、ぜひじっくりと鑑賞していこう。展覧会の内容は随時変わるので、事前に公式ウェブサイトで確認を。一般的な美術館は、その館の収蔵品(コレクション)を展示する常設展や、シーズンごとに変わる企画展が行われている。しかしここACACは厳密には美術館ではない。そのため収蔵品はないのだが、代わりに野外にはすばらしい彫刻の数々が設置されている。

展示棟の入り口に、ACACの野外彫刻散策路マップがあるのでもらっていこう。展覧会の受付でも入手可能

展示棟にはラウンジがあり、芸術にまつわるさまざまな資料を閲覧できる。ギャラリートークの会場などにも使われている

森とアートの組み合わせはまるで異世界！

森のなかに設置された野外彫刻は、全部で22点。森に延びる道は、天候によってはぬかるんでいたり、悪路により一部が閉鎖されていたりするので、散策時には注意が必要だ。ACACでは市民ガイドが独自の目線でガイドを行う「『見えない建築』ツアー」が不定期で行われている。公式ウェブサイトや公式SNSで開催予定をチェックしてから訪れると、より楽しめるだろう。自然は日々変化し、森と共存する彫刻も月日の経過とともに少しずつ変化していく。森を散策しながら彫刻を眺めれば、初めて訪れた人でも、そんな移ろいゆく日々を感じられるに違いない。自然のなかに身をゆだね、感覚的にアートを楽しめるこの空間は、「芸術は難しくて苦手」と敬遠している人にこそぜひ訪れてもらいたい場所だ。

辻けい氏『青森－円2005・2017』。閉ざされた空間に一歩足を踏み入れると、森の緑が鮮やかに目に映る

見返り広場と名付けられた空間に、河口龍夫氏の『関係－時の杖』がある。同氏の『関係－時の庭』という作品も敷地内にあり、どちらにも1本のブロンズの杖が埋められている