いちにぃさん 鹿児島本店

豊富なビタミンやミネラルを含むそば湯でしゃぶしゃぶ。黒豚は脂がおいしいとされる豚。上品なうまみと甘みがあり、箸が止まらない

そば屋が始めた人気のしゃぶしゃぶ店

鹿児島市内を流れる甲突川(こうつきがわ)のほとりに店を構える「いちにぃさん 鹿児島本店」。鹿児島県内に多くの支店をもつ「そば茶屋 吹上庵」がプロデュースする黒豚専門店で、しゃぶしゃぶにもそば屋ならではの工夫を凝らしているのが特徴だ。1995年(平成7)に銀座で創業し、その後日比谷店もオープン。「いちにぃさん」というユニークな店名は国道1、2、3号線が通るエリアで流行らせたいという想いから付けられた。鹿児島市内にはこの本店以外にも、アミュプラザ鹿児島店、天文館店が、霧島市には国分店がある。

鹿児島市の中心部から少し離れた閑静な住宅地に店を構える趣あるたたずまいの本店

お一人様も団体もOKの店内

明るく落ち着いた和の雰囲気で統一された店内には、目的や人数に応じて選べる3タイプの席がある。少人数で訪れるなら粋なカウンター席、数人ならテーブル席がいい。格調高く広々とした座敷席は3人から利用可能だ。

カウンター席からは調理の様子を眺めることができる。店オリジナルの焼酎「一本〆」を飲みながら、料理に舌つづみを打ちたい

庭が見えるテーブル席の部屋はランチで利用しても気持ちがいい。昼はランチメニューと通常メニューのどちらも注文可能だ

「いちにぃさん」の黒豚は、鹿児島県内の数社から仕入れたもので、肉にクセや臭みがなく、繊維質のきめが細かく甘みがあるのが特徴だ。成長期にさつまいもを食べさせることで、独特のうまみと甘みが増すといわれている。鹿児島の黒豚は、今から400年ほど前の江戸時代、交易により琉球から伝わった黒豚にルーツをもつ。明治に入るとさらなるおいしさを追求して、イギリスのバークシャー種との交配が進んだ。その味は、かの西郷隆盛もこよなく愛したといわれる。現在「かごしま黒豚」を名乗るには血統や生育環境、肥育期間などの厳しい基準を満たす必要があり、「いちにぃさん」ではそれをクリアした上質な黒豚のバラ肉をメインに提供している。

肉や野菜を盛り付けた皿が重なるガラスの冷蔵庫のある光景は「いちにぃさん」ならでは

薬味が大活躍！ 食べ方にもおいしさの秘密が

「いちにぃさん」を初めて訪れるなら、やはり店自慢のしゃぶしゃぶを味わいたい。定番の「元祖そばつゆ仕立て黒豚しゃぶコース」は3900円、4500円、6000円の3つの値段設定で、いちばん手頃な「いちの味」でも大満足できること請け合いだ。豚肉と季節の野菜のほか、本日の一品、先付け小鉢、黒豚重ねかつ・ひと口蒸し寿司と汁物、そして自家製のそばが付く。デザートはバナナ入りの自家製プリンだ。

「元祖そばつゆ仕立て黒豚しゃぶコース(いちの味)」は1人前3900円。写真は肉と野菜のみ2人前。この日の「本日の一品」は豚の三枚肉と根菜の煮込みで、汁物は豚汁

まずは主役のしゃぶしゃぶを味わおう。沸騰したそば湯に肉をくぐらせ、3回しゃぶしゃぶして薄いピンクになったときが食べ頃だ。無菌豚なので完全に火が通らなくても問題ないという。しゃぶしゃぶのつけだれは、各店で毎朝とるカツオ出汁で作ったオリジナルのそばつゆに、びっくりするほど大量のネギを入れたもの。うまみたっぷりの豚の脂とそばつゆの相性は抜群で、さっぱりとして飽きがこない。何よりネギの甘みが肉の味を引き立て、思わずやみつきになるおいしさだ。唐辛子とユズの比率を2:8で作った香り高い柚子胡椒も添えられているので味変しよう。うれしいことに、ネギ、そばつゆ、柚子胡椒はおかわり自由だ。

コースの締めくくりは自家製の生そばで

ていねいに調理された彩り豊かな料理を満喫したあとのお楽しみは、シメの生そば。しゃぶしゃぶやそばつゆにあうことから選ばれた、実の真ん中だけを石臼でひいた更科そばだ。豚肉や野菜のうまみが溶け出したそば湯でゆで、そばつゆにつけて食べると、口の中に上品な甘みが広がる。そば屋の発想が随所に生きるぜいたくなしゃぶしゃぶコース。一度口にすれば、鹿児島訪問のたびにきっとまた味わいたくなるはずだ。

更科そばは細いので、1分ほどで火が通る

キビナゴの刺身や薩摩揚げなどの単品メニューも豊富。写真は黒豚モモ肉のスライスを巻いた「黒豚ミルフィーユかつ皿」(1100円)。こちらもそばつゆをつけて