名勝 無鄰菴

歴史的建造物

山縣有朋が愛した、奥行きのある美しき名勝庭園

明治から大正時代にかけて活躍した政治家・山縣有朋(やまがたありとも)。無鄰菴は、山縣が造営した別荘だ。雨の日の風景がいちばん美しいと評判の無鄰菴で、山縣が見た景色を眺めてみよう。

母屋から眺めるお庭。山縣有朋が縁側に腰かけて見ていた風景} 母屋から眺めるお庭。山縣有朋が縁側に腰かけて見ていた風景

無鄰菴誕生に大きく関わった琵琶湖疏水事業

紅葉の名所として知られる、格式高い禅寺・南禅寺。周辺には明治時代に作られた琵琶湖疏水があり、その活用方法のひとつとして期待されたのが、水車の動力を使った製造業の活性化だった。工業用地として、南禅寺界隈の敷地が使われることになっていたが、琵琶湖疏水事業の工事を担当した田邉朔郎(たなべさくろう)の功績により、水力発電による送電が可能に。これにより工場のための土地は必要がなくなり、代わりに財閥などに向けた別荘が造営されることになった。これが現在15軒ほど残っている南禅寺界隈別荘群だ。

無鄰菴の母屋。無鄰菴とは、「隣りに家がない草庵」との意味。南禅寺界隈別荘群のなかで唯一通年公開されている} 無鄰菴の母屋。無鄰菴とは、「隣りに家がない草庵」との意味。南禅寺界隈別荘群のなかで唯一通年公開されている

東山を取り込んだこだわりの庭園

1896年(明治29)に造営された無鄰菴も、この南禅寺界隈別荘群のひとつ。庭園の外にある東山を借景として取り込み、庭園内の築山や石の配置、そして流れを東山に呼応するかたちで入念に配置がされている。この庭の主役は庭園の外にある東山であり、そしてその東山と庭園をつなぐ存在こそが琵琶湖疏水の流れである。琵琶湖疏水事業に関わっていた山縣自身が最初に造営し、琵琶湖疏水から直接、庭園に水を引き入れたという。サイフォンの仕組みで水を持ち上げて滝を流す構造は、現在もそのまま生かされている。庭に強いこだわりをもつ山縣は、作庭を7代目小川治兵衛(おがわじへい)に託す。結果、東山を借景に取り込んだどこまでも続いていきそうな風景が完成。この庭は1951年(昭和26)、国の名勝に指定されている。

三段に流れ落ちる滝から水があふれ、せせらぎとなって流れていく} 三段に流れ落ちる滝から水があふれ、せせらぎとなって流れていく

東山の借景だけじゃない!お庭の見どころ

無鄰菴のおもしろい点は、あえて無造作に見えるように剪定されていたり、野花が生えていたりするところ。また、苔ではなくあえて芝にこだわっているところも注目ポイントだ。これは山縣の好みによるところが大きく、里山のような風景を好んだことに由来するのだとか。しかし、当初は芝が敷かれていた庭は、高湿度の環境により時とともに次第に苔が広がるように。山縣はそれもまた良し、と自然のままの姿を受け入れ、現在では芝と苔のバランスを楽しめる庭になっている。特に雨の日の美しさは必見。実は無鄰菴には、雨の日だけ限定でもらえる入場チケットがあるので、そちらもぜひゲットしてほしい。また、「視点場(してんば)」にも注目を。視点場とは、「ぜひここから庭を見てほしい」と施主が設定し、職人がていねいにはぐくんだ絶景スポットのこと。随所にあるので、お庭を巡る際にはぜひ見つけてみて。

視点場である飛び石。伽藍石といって、お寺の建築の礎石を摸したもの。ひとつだけ大きかったり、突き当たりにあったりすることが目印} 視点場である飛び石。伽藍石といって、お寺の建築の礎石を摸したもの。ひとつだけ大きかったり、突き当たりにあったりすることが目印

洋館やカフェでゆるりと過ごそう

無鄰菴には母屋のほか、茶室と洋館がある。茶室は藪内流の燕庵を模したもの。予約をすれば貸し切りにでき、お茶会を行うこともできる。また、洋館は1903年(明治36)に、山縣、伊藤博文、桂太郎、小村寿太郎の4名による「無鄰菴会議」が開かれて日露戦争の開戦についての、事前の協議が持たれた場所。当時、実際に会議で使われた部屋を見ることができる。

2階建ての洋館は、映画などの撮影で使われたことも。1階は展示室になっている} 2階建ての洋館は、映画などの撮影で使われたことも。1階は展示室になっている

「無鄰菴会議」が行われた部屋。壁紙なども当時のまま} 「無鄰菴会議」が行われた部屋。壁紙なども当時のまま

母屋の1階は「庭園カフェ」として、お庭を眺めながらドリンクとスイーツをいただくことができる。ドリンクとスイーツはそれぞれ自由に組み合わせることができ、ドリンクは定番のお抹茶はもちろん、クラフトビールやスパークリングワインまでそろう。スイーツはここでしか味わえない限定メニューのほか、抹茶もなかアイスやピスタチオなどジャンルもさまざま。好みに合わせてゆったりと過ごしてもらいたいとの心づかいを感じられるのがうれしい。山縣が愛した風景のなかに身をゆだねつつ、心穏やかな時間を過ごそう。

ドリンクとスイーツは入場料込みで1600円。この日は抹茶と無鄰菴オリジナルどら焼き(数量限定)をセレクト} ドリンクとスイーツは入場料込みで1600円。この日は抹茶と無鄰菴オリジナルどら焼き(数量限定)をセレクト

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スポット詳細

住所
京都府京都市左京区南禅寺草川町31 map map 地図
電話番号
0757713909
時間
[4-9月]9:00-18:00
[10-3月]9:00-17:00
休業日
12/29-12/31
料金
[入場料]600円
駐車場
なし
クレジットカード
不可
電子マネー/スマートフォン決済
不可
Wi-Fi
なし
コンセント口
なし
喫煙
不可
英語メニュー
あり
平均予算
【昼】1-1,000円, 1,001-3,000円
備考: 夜間イベントについては内容によって価格が異なる。夜間プライベート利用は30万円
滞在目安時間
30-60分
車椅子での入店
可(母屋より場内用の椅子をご利用いただきます。庭園内は車いす利用不可)
乳幼児の入店
雨の日でも楽しめる
はい
備考
公式サイト(https://murin-an.jp/)

情報提供: ナビタイムジャパン

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クチコミ

  • 日本の文化に解説付きで接することができ理解が深まる
    4.0 投稿日 : 2023.05.09
    訪問時は3月末の桜が満開時だったので国内外の観光客で溢れていましたが、事前予約制の入場制限を行なっている当施設ではゆっくり内部を見学することができました。明治の元勲山縣有朋の趣味で作り上げられ現在は植彌加藤造園の管理運営、予約も植彌のサイトから予約できます。敷地面積はそれほど大きくはないのですが非常に雄大な印象を受けます
  • 良いね
    5.0 投稿日 : 2022.10.09
    無鄰菴は、名前の由来は山縣有朋の地元が長州でお隣に家がなく、その雰囲気を感じるために付けられたようです。敷地自体は約1000坪と決して大きくはありませんが、東山を背にして手前に広がる三角形の敷地を遠近法的に上手く使って、東山を背景に庭自体を大きく広く見せていてお見事です。また1903年4月21日、ロシア帝国との緊張関係が続く中、ここ無鄰菴庭園の洋館2階でいわゆる「無鄰菴会議」が開かれました...
  • 元老 山縣有朋の別荘
    5.0 投稿日 : 2022.04.27
    テレビでも放映されたことがある南禅寺界隈別荘群の唯一通年公開されている庭園です。コロナ禍でネットからの事前予約が必要ですが京都市の所有ですので入場料もお手頃です。山縣有朋は庭を作るにあたって、東山を主山に。池を配せず水の流れを配し、芝生の庭を。と有名な作庭家七代目小川治兵衛に命じたそうです。そのため京市内に流れ込む琵琶湖疎水の安定した水量の水を利用した流れを利用しているそうです。国の名勝の一つとし...

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アクセス

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