高台寺

国の名勝に指定されることを示す石碑が立つ

ねねに思いを馳せて歩みを進めたい台所坂

高台寺は1605年(慶長10)、豊臣秀吉の正室・北政所ねねが夫の菩提を弔うため、創建した寺院である。天下人として栄華を極めた秀吉は、1598年(慶長3)にその生涯を閉じた。夫亡きあと、ねねは大坂城を離れて京に移り、仏門に入って「高台院(こうだいいん)」の名を賜ったことから寺院は「高台寺」と名づけられた。ねねは現在の圓徳院の地に住み、日々、高台寺に通っていたと伝わる。石畳の散策道「ねねの道」からゆるやかな石段が続く「台所坂」を上ると拝観受付がある。

木々がトンネルのように覆う台所坂

桃山文化の豪壮さを感じる庭園を鑑賞

拝観ルートに従って進むと最初に方丈の参拝となる。方丈前庭は「波心庭(はしんてい)」と呼ばれ、春には立派なしだれ桜が咲き誇る。さらに進むと茶人としても名を馳せた作庭家・小堀遠州(こぼりえんしゅう)が手がけた庭園が広がる。大きな石を配した庭園は桃山時代の絢爛さそのもの。石組みの配置に遠州の美意識を感じることができるだろう。庭園の中央には初代の住職・三江紹益禅師を祀る開山堂が建ち、内部の天井には秀吉が使ったという御座船やねねが使用していた御所車の部材が使われているのでお見逃しなく。

方丈前庭には美しい白砂が広がる

東山を背にしたダイナミックな枯山水庭園

開山堂。夜間拝観では幻想的な光に包まれる

ねねが静かに眠る墓所・霊屋

続いて開山堂の東側、高台に位置する霊屋(おたまや)の参拝へ。こちらは秀吉とねねを祀る建物で、ねねが埋葬された場所(墓所)でもある。内部の須弥壇や厨子には「高台寺蒔絵(こうだいじまきえ)」と呼ばれる壮麗な蒔絵が施され、桃山時代の漆工芸の代表例として名高い。ねねの木像は右足を立てたようなお姿をしているが、こちらは当時の身分の高い女性の正式な座り方だったそうだ。拝観ではこのあと、伏見城から移築したと伝わる茶室・傘亭と時雨亭を外から見ることができる。趣向を凝らした造りは絢爛かつ自由な当時を思い起こさせる。天下人とその妻に思いを巡らせながらゆっくりと拝観したい。

創建当時の建物で重要文化財に指定される霊屋

ねねは木像の下に埋葬されているという