函館市旧イギリス領事館

1934年(昭和9)まで領事館として使われ、1979年(昭和54)に函館市の有形文化財に指定

外観の白とブルーのコントラストが異国情緒を誘う

ベイサイドから元町公園にまっすぐ延びる「基坂(もといざか)」を登り、元町公園に入る少し手前、公園に向かって左側に函館市旧イギリス領事館がある。美しいバラの庭園と白壁のノスタルジックな建物で、窓枠のブルーがなんともかわいらしい。門の脇にはイギリス国旗のユニオンジャックがはためいている。比較的小さな建物の中は、領事館として使われていた当時の様子を再現した展示室や、たくさんの仕掛けが楽しい開港ミュージアムコーナー、ティールームと盛りだくさんだ。イギリス領事館は、国際貿易港として函館が開港した1859年(安政6)にアメリカ、ロシアに続き開設された。

函館は坂が多い。基坂は坂の下の花壇と、オレンジ屋根の海上自衛隊の建物が目印だ

函館の街づくりに貢献したユースデン領事

イギリス領事館は函館の大火で複数回、焼失している。現在の建物は1913年(大正2)にイギリス政府の設計で竣工したものだ。首都に置かれる大使館とは異なり、領事館は自国民が多いエリアや国際交流の拠点など、その国が必要とする地域に任意で置かれる。数多くの領事館があった函館が、当時は国際都市として賑わっていたことがよくわかる。旧イギリス領事館では、歴代領事のなかでも特に市民に愛されたという、リチャード・ユースデン領事を中心に紹介。ユースデンは市民生活における公園の重要性を提唱し、賛同した多くの市民が協力して函館公園が開設された。ユースデン夫人は、遊郭で働く女性の技術指導や、学業の場として設けられた「女工場(じょこうば)」で洋服の洗濯指導を行った。

ユースデン領事の人形が函館の街を窓から眺めている。背が低くかわいらしい領事だったそう

イギリス流のティータイムをイメージした家族居室ではユースデン夫人の功績を紹介

ちょっとした仕掛けが楽しい歴史エリア

展示室から開港ミュージアムに進むと、函館開港の歴史がパネルで紹介されている。床に置いてある樽をのぞくと、明治時代の基坂の様子が見えたり、ダンスをする人々が登場したり。開港時の函館に思いを馳せながら次の開港記念ホールに向かうと、床一面にノスタルジックな世界地図が敷かれていた。これは江戸末期に発売された『箱館真景』という木版図をモチーフにしたものだそう。さらに、開港によって西洋文化がもたらされた函館市民になりきれる「箱館ハイカラスクエア」や、函館を訪れた西洋人をパネルで表現した「箱館モダンストリート」とユニークな展示が続く。

樽の中には何があるのかな……。子どもも楽しめるスポットだ

本格アフタヌーンティで、休憩しよう

見学が終わったら、少し休憩しよう。館内のティールーム「ヴィクトリアンローズ」では、イギリスから取り寄せた調度品に囲まれて、優雅なティータイムを過ごせる。アフタヌーンティーセットは、サンドイッチやスコーンにクッキーなどのペイストリーがセットになった、伝統的なスタイル。6月下旬から7月上旬にかけてのバラの見頃には、窓から美しく咲き誇るバラが見え、ヨースデン領事夫妻もこうやって、函館の午後のひとときを楽しんだに違いない。ショップは領事館にちなみ、イギリスの雑貨がたくさん並んでいる。お土産用というよりふだん使いにぴったりな小物が見つかるだろう。見学が終わったら忘れずに足を運びたい。

優雅なティータイム

赤いバラはイギリスの国花でもある。洋式庭園には60種153株のバラが植えられている