赤城自然園

水辺で育つ山野草の「クリンソウ」。小川に沿って群生している

植物の美しさに感動！　自然のなかのハイキング

赤城山の西麓を登り、標高600～700mに位置する赤城自然園を訪れたのは5月下旬。下界よりずいぶんと涼しい。散策コースへと向かうと、ちょうど白い花を咲かせ始めたヤマボウシの木が迎えてくれた。散策コースは木の皮(バーク)が敷き詰められていてやわらかく、疲れにくく歩きやすい。森のなかは空気が澄んでいて、時折、木々の間を吹き抜けるそよ風が心地よい。木漏れ日を浴びながら、ハクウンボクやヤマブキソウなどの花が咲く散策道を進むと、花咲くイングリッシュガーデンが広がっていた。シャクナゲ園では、見頃を迎えた「レッドチャーム」が深紅の花を咲かせていた。初夏の太陽に真っ赤な花びらが鮮やかに輝くさまをしばし鑑賞。さらに進み、見晴らし台から広場を見下ろすと、小川のほとりに小さな花が咲いている。花に近づいていくと蝶が待っていた。ここには、虫たちのほか、リスや野鳥などの小さな動物たちも生息しているという。高山植物と低地に育つ植物が生育できる標高にあるため、多種多様な動植物に出合える森なのだ。

エントランスで白い花を咲かせる「ヤマボウシ」の木

光沢のある深紅の花びらがゴージャスなシャクヤクの「レッドチャーム」

見晴し台から見下ろしたイングリッシュガーデン

何度でも訪れたい、季節ごとに表情を変える森

赤城自然園は、1980年代、西武セゾングループの堤清二氏が主導して開発された森。「人間と自然との共生」を目指し、長い年月をかけて植生を入れ替え、動植物が棲みやすい環境を育ててきた。背の低い草花にも光が届くよう整備され、希少な山野草も数多く群生している。広さはなんと120万平方メートル。その約半分が公開されている。園内は、ツツジやシャクナゲなどの花園が続く「セゾンガーデン」と、しばふの広場やツリーハウスなど、森のなかで遊べる「四季の森」、野草や昆虫に出合える「自然生態園」の3つのエリアに分かれ、思いおもいの過ごし方ができる。撮影スポットとしても人気で、写真を撮っている人も多い。園内には、間伐材で作ったベンチやイスが配され、山歩きの休憩をしながら豊かな自然をゆっくり観賞できる。春は咲き誇る花々の豊かな色彩に彩られ、夏は動植物の生命力にあふれ、実りの秋には木々が鮮やかに色づく。そして、冬は、静かな森に野鳥の鳴き声が響きわたる……。四季の移ろいとともにその姿を変えながら、自然の豊かさ、尊さを五感で感じることができる。

色彩豊かに咲き誇るシャクナゲ。見頃は4月下旬から5月中旬まで

10月下旬から木々の葉が赤く色づき、森は実りの秋を迎える。紅葉の見頃は11月中旬まで

科学的に癒し効果が実証された森で「森林セラピー」

赤城自然園の豊かな自然がもたらす癒し効果は、科学的に実証されている。NPO法人森林セラピーソサエティと独立行政法人森林総合研究所・千葉大学が、森林セラピー生理・心理効果を検証し、2014年(平成26)に「森林セラピー基地」に認定された。確かに、ここで過ごしていると、どこまでも澄んだ空気と植物たちが放つ息吹に包まれて、心も身体もリラックスしているように感じる。赤城自然園では、この癒し効果を最大限に享受してもらおうと、森林セラピープログラム「森deリトリート」を定期的に開催している。栄養専門の医師が監修し森林セラピーガイドの有資格者が案内する本格的なプログラムで、芝生に寝転んだり、木に抱きついたりして五感を刺激するなど、全身で森の癒し効果を感じる内容だ。免疫力を高める食事も用意されている。このほか、ウォーキングやヨガ、モルック、移植樹体験、親子遊び教室なども実施している。

木立に囲まれたしばふの広場には爽やかな風が吹き抜ける

目を閉じて木々が放つ癒し成分フィトンチッドを吸い込もう