広島

福山・鞆の浦

FUKUYAMA / TOMONOURA

文化施設が充実した城下町と、潮待ち・風待ちの港として万葉集に登場する港町

福山市は、備後(びんご)と呼ばれる広島県東部の中心都市。歴史観光スポットは中心部と南部の鞆の浦の2か所がある。中心部はまずJR福山駅のすぐ北に位置し、水野勝成が築いた「福山城(福山城博物館)」と、その周辺の「ふくやま美術館」や「ふくやま文学館」などが文化ゾーン。JR福山駅から少し離れ、芦田川の西岸にある明王院は本堂、五重塔が国宝に指定され、その眼下には中世の集落遺跡・草戸千軒町遺跡がある。中心部から車で約30分の鞆の浦は、万葉の昔から潮待ちの良港として栄え、常夜燈や雁木など江戸時代からの港湾施設がシンボル的存在になっている。沖に浮かぶ仙酔島も含めた美しい風景は朝鮮通信使や多くの文人墨客が絶賛した。狭い道の両脇に建物が軒を連ね、昔ながらの生活の匂いを失わない街には、朝鮮通信使や坂本龍馬関連の史跡も数多く残る。少し足を延ばせば断崖の上に立つ阿伏兎観音があり、ここでも絶景を楽しめる。

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エリアの見どころ

  • spot 01
    金山彦神社
    『時をかける少女』の主人公が、時空を超えて過去へ降り立った
    大林宣彦(おおばやしのぶひこ)監督の尾道三部作などの映画ロケ地として知る人ぞ知る神社が、千光寺山ロープウェイ乗り場(山麓駅)の近くにある「艮(うしとら)神社」。そして『時をかける少女』の時空をさまよう主人公・和子がワープし、過去へと降り立った場所が、艮神社の境内社である金山彦神社の横にある鳥居の前だ。辺りは艮神社の神木の大楠が空一杯に枝を張り出し、奥には巨大な磐座(いわくら)があり、町なかであるにもかかわらず、スピリチュアルな空気が漂っているように感じられる。そして、ここが「時空を超越して神が降臨する」場所であるような気がしてくる。金山彦神社の祭神は、社名が表すとおり金山彦神(かなやまひこのかみ)。『日本書紀』で金山彦神、『古事記』では金山毘古神と表され、金山毘売神(かなやまびめのかみ、金山姫神)と対になるとされる。神産みの際、イザナミが火の神カグツチを産むときに陰部を焼かれ、病んで苦しみながら吐いた嘔吐物(たぐり)から化生した神で、たたら製鉄の守護神として祀られる金屋子(かなやこ)神は、この2神の子神ということだ。
    『時をかける少女』の主人公が過去へと降り立った場所が、写真右手の鳥居の前で、その奥に磐座(いわくら)がある。左手の鳥居が金山彦神社だ
  • spot 02
    福山城
    「令和の大普請」で往時の姿がよみがえった西国鎮衛の要の名城
    「日本100名城」のひとつに数えられる福山城。国宝だった天守閣は大空襲で焼失してしまったが、再建されたコンクリートの城が往時の姿に復元。焼け残った伏見櫓や筋鉄御門とともに、ありし日の壮観をほうふつさせる。
    「福山城博物館」となっている天守閣は、北側壁面に「鉄板張り」が施され、往時の姿に復元された。博物館も2022年(令和4)8月に内容を一新してリニューアルオープン
  • spot 03
    ふくやま美術館
    イタリアを中心とする欧州の近現代美術が自慢の美術館
    ふくやま美術館は、広島県東部の広域圏の美術館として誕生。エリアの美術作品を収集するのは当然だが、イタリアを中心とする近・現代ヨーロッパ美術の作品を収集の柱のひとつにすえているユニークな美術館だ。
    赤い色彩が周囲の緑と溶け合う「愛のアーチ」
  • spot 04
    明王院
    芦田川のほとりに静かにたたずむ「西国屈指の寺院」
    本堂が再建されて2021年(令和3)で700年になった明王院は、今はほとりを流れる芦田川の川中に眠る中世集落遺跡「草戸千軒町遺跡」が門前町、港町として栄えたのを背景に西国屈指の寺院となった
    国宝の明王院本堂
  • spot 05
    鞆の浦史跡巡り
    潮待ちの港の豊かな歴史を知り、風情を感じながら歩こう
    古くから瀬戸内海の潮待ちの港として栄え、万葉集にも詠われた福山市の鞆の浦。沖に仙酔島や弁天島が浮かぶ景勝地で、江戸時代には北前船や朝鮮通信使の寄港地となったほか、坂本龍馬ら幕末の史跡も多い。
    入り江の穏やかな港に小さな舟が停泊する鞆の浦
  • spot 06
    常夜燈・雁木
    国内で唯一まとまって現存する江戸期の港湾施設
    万葉の昔から潮待ちの港として有名な鞆(とも)を象徴する光景といえば、江戸後期から明治前期に整備された石造りの常夜燈と石段状の船着き場の雁木だろう。江戸期の港湾施設がまとまって現存するのは国内唯一。
    堂々たる貫禄の常夜燈
  • spot 07
    福禅寺・対潮楼
    朝鮮通信使をもてなした歴史を伝える
    朝鮮王朝が江戸幕府の将軍の代替わりや世継ぎ誕生を祝うため派遣した朝鮮通信使。鞆はその寄港地のひとつで福禅寺は一行の宿舎となった。客殿の対潮楼からは通信使が激賞した仙酔島や弁天島の風光明媚な風景を楽しめる。
    「日東第一形勝」の書のことは朝鮮に伝わり、のちの通信使は書や景色を見るのを楽しみにした
  • spot 08
    御舟宿いろは
    鞆の浦名物「鯛」のおいしさを凝縮した料理を堪能
    江戸時代から続くとされる勇壮な「しばり網漁法」(福山市無形民俗文化財)を船上から見学できる観光鯛網が人気を集めるように、鯛は鞆の浦の名物だ。古民家を再生した「御舟宿いろは」は、鯛を中心にした料理を提供している。特に鯛を酒や昆布で1週間以上漬け込んだ「鯛いろは漬け」。刺し身にはない濃厚なうまみが生まれ、そのまま食べてもワサビ醤油で食べてもおいしい。しめには、少し残した「鯛いろは漬け」をご飯の上に載せ、出汁をかけて「鯛茶漬け」にすると絶品だ。この「鯛いろは漬け」を地元産の季節の総菜とともに御膳として提供する。「いろは御前」1450円は、鯛いろは漬けにご飯、口取り、小鉢、香物、出汁が付く。鯛の兜煮と季節の小鉢を加えた「鞆の浦鯛づくし御膳」2300円も人気だ。
    出汁を注いで食べる鯛茶漬け
  • spot 09
    保命酒屋
    独特の甘みと滋養をもつ鞆名産の保命酒
    福山藩の保護を得て漢方薬である保命酒の独占製造を許されていたのは豪商中村家。幕府への高級献上品、鞆名産として全国に知られた。みりんに薬草を漬け込んで造られ、独特の甘みがあり、体力増進、疲労回復などに効果があるとされる。明治に入ってその専売制が廃止され、複数の業者が製造、販売を引き継ぎ、現在は4社。そのひとつが、1879年(明治12)に造り始めた鞆酒造だ。太田家住宅の隣にあり、かつて中村家の建物だった民家を改装して2001年(平成13)に直営店「保命酒屋」をオープン。商品はガラス瓶入りの「十六味保命酒」のほか、豆徳利入り、香り袋、保命酒粕、保命酒粕石鹸がある。保命酒は、江戸時代には備前焼に入れて全国各地に運ばれたとされ、豆徳利入りは、陶芸が趣味の当主が自作した備前焼を使用している。干支の形の徳利もあり、希望の形を注文できる。
    保命酒はガラス瓶や備前焼の徳利に入っている。「十六味保命酒」300㎖瓶入り1200円など
  • spot 10
    阿伏兎観音 (磐台寺観音堂)
    美しい海と荒々しい岩肌に調和する岬の突端の観音堂
    沼隈半島の南端にある阿伏兎観音は海面から高さ約15mの断崖の上にあり、朱色に輝く建物は自然と見事に調和している。航海の安全のほか、子授けと安産の祈願所として有名だ。
    海からせり上がったような崖の上に建つ姿は迫力がある
  • spot 11
    入江豊三郎本店
    朝鮮通信使やペリー提督にも振る舞われた鞆名産の薬酒「保命酒」
    鞆(とも)の浦の名産品「保命酒(ほうめいしゅ)」は、由緒ある歴史をもつ薬酒。江戸時代に保命酒は福山藩の保護を受け、備後の名産品として全国的に名が広がった。『日本外史』で名高い頼山陽(らいさんよう)も、しばしば鞆を訪れ保命酒を愛飲。朝鮮通信使や日米和親条約を締結したペリー提督にも、この酒が振る舞われたといわれている。1886年(明治19)創業の「入江豊三郎本店」は、鞆にある保命酒の蔵元のひとつ。4軒ある保命酒屋のなかでも唯一、植物性のみの材料、薬草を使っているという。みりんを製造販売しているのも、ここだけだ。2021年(令和3)11月に改装オープンした本店では、独自の製法で造られる保命酒はもちろん、本みりんや保命酒のど飴そのほか各種土産を取りそろえ、保命酒の試飲もできる。また本店から少し離れたところに、約200年ほど前の建物と伝えられる仕込蔵があり、今もこの場所で保命酒や本みりんを製造している。この蔵にも店舗が併設され、古い看板や量り売りに使われた道具などを展示するコーナーもある。本店・蔵店ともにちょっとした観光スポットの趣で、気軽に立ち寄れる。また、薬酒が観光土産になっているのも珍しい。鞆を訪れたなら、ぜひこの保命酒を土産にしたい。
    いかにも老舗といった風情を漂わせる店構え
  • spot 12
    魚勝
    飯の下にぜいたくな具をうずめて隠した福山の郷土料理「うずみ」
    福山の郷土料理として知られる「うずみ」。江戸時代に質素倹約が奨励され、ぜいたくな料理が堂々と食べられず、飯の下にぜいたく品と見なされた具をうずめて隠しながら食べたものだという。福山のほかにも、山陰の津和野で「うずめ飯」が伝統料理となっているなど、「飯に埋める(うずめる)」食文化が伝承されてきた。高度成長期以降に食生活が多様化され、あまり食べなくなったが、福山の小学校では郷土の歴史の学習とともに、学校給食で「うずみ」が提供されているという。その「うずみ」を店の名物のひとつとする魚勝は、創業60年余の老舗割烹。各種海鮮料理が主力でうなぎも名物の店だが、「うずみ」「ねぶとの唐揚げ」など福山の郷土料理も提供している。「うずみ」は白飯の下に埋められた具が盛りだくさん。海苔や三つ葉を載せて、出汁をかけてお茶漬けのように食べていくと、中からエビほかいろいろな具が出てくる。その「うずみ」は単品でも食べられるが、昼弁当にプラス300円で「うずみ」を付けられるので、ランチタイムにはそちらがおすすめだ。
    「うずみ」(単品1100円)は小鉢と香の物が付く。一見ただの白飯に見えるが、その下に埋められた具がいっぱいだ。出汁をかけて茶漬けのように食べる
  • spot 13
    季節料理 衣笠
    「漬け」にした鯛がたっぷり入った鞆の浦ならではの「鯛うずみ」
    「潮待ちの港」で知られる鞆の浦の名物料理といえば鯛料理。その鯛料理を楽しめる店のひとつが、鞆の浦の町並みの玄関口付近に趣のある店を構える「季節料理 衣笠」。「季節料理」を店名に冠するように、ここでは鞆の浦近海で獲れた海の幸をはじめ各地から仕入れた旬の魚介や野菜を使った季節料理が楽しめる。鯛料理が人気で、鯛めし、かぶと煮、刺身、鯛茶漬け、鯛うずみとレパートリーはそろうが、なかでも注目は福山の郷土料理「うずみ」を衣笠流で楽しむ「鯛うずみ」(1100円)。ここの「うずみ」は、とろろがたっぷりかかったうえに青ジソが載り、見た目も美しく食欲がそそられる。とろろがかかったご飯の下には、「漬け」にした鯛が入っている。鯛はコリコリとした歯ごたえで、身の甘みとタレの甘辛さのハーモニーがよく、ご飯やトロロとの相性も抜群。出汁をかけて食べるのが普通だが、その前に混ぜ込んで「ひつまぶし」風に食べたりもできる。出汁をかけると風味が広がり、かける前とは違ったさっぱりした味わい。この「鯛うずみ」のほか、鯛を味わい尽くす「鯛づくし膳」(3500円)や「鯛めし膳」(2500円)も人気だ。
    ご飯の上にとろろがたっぷりかかり、見た目も上品でおいしそう
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旅のヒント

  1. その1

    JR福山駅へは広島駅から山陽新幹線のぞみで約25分、こだまなら約55分。岡山駅からは山陽本線で約60分。福山駅から鞆の浦へは「ともてつバス」で約30分。

  2. その2

    車なら山陽自動車道福山東ICを利用、福山中心部までは約30分。福山駅から鞆の浦へは約30分。鞆の浦からの帰路は山の尾根を走るグリーンラインを通るのがおすすめ。眼下に鞆の浦の家並みや港が見えるドライブコースだ。

  3. その3

    福山・鞆の浦は倉敷、尾道からも近いので1泊2日で3つの町を巡るプランを立てるといい。

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