島根

津和野・益田

TSUWANO / MASUDA

「山陰の小京都」津和野「柿本人麻呂・雪舟ゆかりの地」益田

島根県西部の山間にあり、「山陰の小京都」と称される津和野。津和野藩の城下町で、家老屋敷跡が並ぶ「殿町通り」の白壁土塀が続く街並みと、掘割に鯉の群れ泳ぐ風景が有名だ。「日本100名城」になっている「津和野城跡」には観光リフトが通じ、山上に広がる城跡からはすばらしい眺望を楽しめる。キリシタン迫害の悲話を秘めた「津和野カトリック教会」や、「日本五大稲荷」のひとつで千本鳥居のある「太皷谷稲成神社」も見逃せない。奥津和野には「中国の銅山王」と称された堀氏の名園「堀庭園」があるので、ひと足延ばして訪れてみたい。いっぽう島根県西部の中心都市・益田は、目立った観光スポットはないものの万葉の大歌人・柿本人麻呂や画聖・雪舟が人生を閉じた地で、ゆかりの史跡や神社などがある。また「28万枚の石州赤瓦」で覆われた石見地方の芸術文化の殿堂「グラントワ」は、「建物そのものが芸術品」といわれ、一度は足を運ぶ価値がある。

recommend spot

エリアの見どころ

  • spot 01
    殿町通り
    美しい白壁が続き、掘割に鯉が泳ぐ津和野のシンボル通り
    藩校跡や家老屋敷跡の白壁が石畳の通り沿いに続く「殿町通り」。津和野を代表する風景がここにある。殿町通りから続く「本町通り」は、老舗商家が並ぶ昔ながらの商店街。ひと足延ばして城下町の町歩きを満喫したい。
    この景色をひと目見るために、多くの人が津和野を訪れる
  • spot 02
    津和野カトリック教会
    乙女峠に殉教したキリシタンの信仰の証しを今に語り継ぐ聖堂
    津和野の「殿町通り」に、てっぺんに十字架がある尖塔が目立つ。その美しい白亜のゴシック建築が、1931年(昭6)にドイツ人シェーファー神父によって建てられた「津和野カトリック教会」の聖堂だ。「たたけよ、さらば開かれん」という聖書の言葉どおり、毎週日曜にミサが行われる聖堂には、開館時間内なら自由に立ち入ることができる。おごそかな玄関を入れば、正面に祭壇、右には聖ヨセフ、左には聖母マリアの像がある。色鮮やかなステンドグラスが印象的だ。そしてゴシック風の外観からは想像できないが、聖堂内部の床が畳敷きになっている。この津和野カトリック教会を創設したのは、殉教に関心をもつフランス人宣教師のエメ・ヴィリヨン神父。あまり知られていないが、「山陰の小京都」津和野はキリシタンの殉教地でもある。明治時代の初期、津和野に流刑された長崎浦上の信徒が神道への改宗を迫られ、多くの殉教者が出た。それが「乙女峠の殉教秘話」として語り継がれ、この聖堂で殉教者への祈りが続けられている。聖堂に隣接して、殉教の資料を集めた「乙女峠展示室」がある。
    白壁土塀が続く和空間の殿町通りで、ゴシック建築の教会聖堂が異彩を放つ。石造に見えるが、実はモルタル外壁の木造建築だ
  • spot 03
    森鴎外記念館・旧宅
    森鴎外のすべてがわかる記念館、鴎外が幼少期を過ごした旧宅
    森鴎外といえば、夏目漱石と肩を並べ、明治・大正を代表する文豪として知られる。2022年(令和4)7月に没後100年を迎えた鴎外は、文学者であるばかりか、国立博物館総長や日本芸術院長も務めるなど、日本の文学・芸術の発展に大きな功績を残した人物で、単なる小説家ではない。森家は代々医者の家系で、津和野藩で御典医を務めていたが、1872年(明治5)に廃藩置県にともない上京。鴎外(林太郎)も家族とともに上京し、東京医学校に学び陸軍軍医となったが、津和野に生まれ育ち、藩校「養老館」に学んでいる。その鴎外の旧宅(国指定史跡)が津和野の町はずれに残り、気軽に見学できる。また、旧宅に隣接して「森鴎外記念館」が立ち、そこから旧宅に行ける造りになっている。そこでは鴎外の遺品や直筆原稿など貴重な資料を展示し、映像や写真パネルで幅広い鴎外像を紹介。鴎外への親しみと理解を、いっそう深めることができる施設だ。津和野川の常盤橋を渡った川向こうには、鴎外とも親交があった日本近代哲学の祖・西周(にしあまね)の旧居もあるので、あわせて訪ねてみたい。
    土塀に囲まれた質素な平屋に、鴎外の幼き頃がほうふつされる旧宅
  • spot 04
    安野光雅美術館
    安野光雅の世界観に触れて童心に帰れるファンタジックな美術館
    JR津和野駅からほど近く、白壁土蔵のようなフォトジェニックな外観が目をひく。その建物が、国際アンデルセン賞を受賞した津和野出身の絵本作家であり、画家でもある安野光雅の作品を収蔵・展示する「安野光雅美術館」だ。広々した館内は天井が高く、落ち着いたムードが漂う。ロビーの壁面は、安野がデザインした不思議な「魔方陣」のタイルで装飾されている。2つある展示室では、絵本だけでなく風景画や本の装丁、ポスター、エッセイなど、幅広い分野で活躍した安野の約4000点に及ぶ収蔵作品から、約120点を年4回入れ替え展示している。別館(学習棟)には、昭和初期の小学校の教室を再現した「昔の教室」や図書室、安野の自宅アトリエを再現した部屋などがあり、懐かしい雰囲気に包まれ、心がほっと温まるような空間になっている。また、プラネタリウムも併設され、津和野の四季折々の星座や、安野作の『天動説の絵本』を鑑賞できる。安野ファンならもちろん、そうでなくとも訪れる価値があるスポットだ。
    石州赤瓦に漆喰白壁なまこ壁の風情ある建物の美術館。館内もファンタジックにあふれている
  • spot 05
    津和野城跡
    津和野の町を見下ろす「天空の城」に、壮大な城郭の石垣が残る
    津和野の町を見下ろす山上にある津和野城跡は、鎌倉時代からの長い歴史をもつ城跡。江戸時代初期に築かれた壮大な城郭の石垣が広がる山上へは、リフトで手軽に登ることができる。津和野の町歩きとあわせて訪れたい。
    山上の城跡から眼下にする津和野の町は石州赤瓦がよく目立つ
  • spot 06
    太皷谷稲成神社
    「日本五大稲荷」のひとつで、ファンタジックな千本鳥居がある
    太鼓谷稲成神社は、津和野藩主が藩と領民の安寧を祈願し創建した「おいなりさん」。津和野城跡がある城山の山腹にあり、津和野の町からの表参道には「千本鳥居」が続く。「四ヶ所参り」で願い事を叶えたい。
    朱色がまばゆい境内に稲成大明神ののぼりが立つ
  • spot 07
    名勝旧堀氏庭園(堀庭園)
    「中国の銅山王」の栄華を物語る奥津和野の比類なき名園
    津和野町の山間部に、「国指定の名勝」となっている堀庭園がある。「中国の銅山王」と称された堀氏の栄華を物語る名園で、3つの庭はそれぞれ見ごたえがある。特に、客殿の「楽山荘」から愛でる庭の絶景は必見だ。
    客殿「楽山荘」と池泉回遊式の庭園。建物も庭も風流な趣
  • spot 08
    沙羅の木 松韻亭
    津和野の名店で味わう郷土料理「うずめ飯」と銘菓「源氏巻」
    殿町通りにある「沙羅の木」は、グルメや土産がそろう津和野観光の中心。食事処「松韻亭(しょういんてい)」では、家老屋敷跡の見事な庭を眺めながら食事をできる。郷土料理の「うずめ飯」と銘菓「源氏巻」は、ぜひ味わいたい逸品だ。
    美しい庭園を眺めながら、落ち着いた和の空間で抹茶もいただける
  • spot 09
    寿司割烹あおき
    郷土料理「うずめ飯」と地元の食材を使った創作料理が評判
    JR津和野駅から歩いてすぐのところにある「あおき寿司」は、地元でとれた新鮮な川魚や野菜を使った創作料理が人気の店。津和野はテレビドラマ『砂の器』の舞台にもなったが、撮影終了時にはスタッフがここで打ち上げをしたという。この店は「寿司割烹」だが、店頭の暖簾に「寿司」「郷土料理うずめ飯」とうたっているように、「うずめ飯」を看板商品のひとつにしている。ここのうずめ飯は、旬の野菜が茶漬けにほどよく隠れ、ワサビが入ったブブ漬け風。津和野名産の新鮮な「山ワサビ」を使い、とても美味だと評判。新鮮なワサビはやさしい味で、あまり鼻にツンとくることなく料理を引き立てる。「うずめ飯定食」には、昆布が練り込まれた刺身こんにゃくも付くが、そちらも注目の逸品だ。主人も気さくに、食材や料理についていろいろ教えてくれる。この店では、ほかにも「鮎の姿寿司」などの注目メニューがあるので、うずめ飯は単品(500円)で注文し、主人がすすめる握り寿司など、食指が動く品を注文するのも一案だ。
    うずめ飯に刺身こんにゃく、ずいきとオクラの小皿に茶碗蒸しが付いた「うずめ飯定食」(1300円)
  • spot 10
    美松食堂
    太鼓谷稲成神社の参道にあり、「黒い稲成寿司」が名物
    津和野藩主が藩と領民の安寧を祈願するため、京都の伏見稲荷から勧請した太皷谷稲成(たいこだにいなり)神社。その表参道「千本鳥居」の入り口近くに店を構えるのが、「黒い稲成寿司」が名物の美松食堂(みまつしょくどう)だ。1931年(昭和6)の創業で、津和野でいちばん古い食堂だという。店構えも店内も昔ながらの食堂の趣で、うどんやそば、定食などを提供しているが、ここでは訪れた人の誰もが有名な黒い「稲成寿司」を注文するという。「稲成寿司」は単品(6個650円)もあるが、うどんやそばと稲成寿司がセットになった定食も提供している。ここの「稲成寿司」の黒い油揚げは、通常の甘くてジューシーな「おいなりさん」とは違い、醤油のうまみが凝縮しているような滋味深い味わい。揚げの「黒い色」は黒砂糖などを使用しているのではなく、味付けは醤油と砂糖のみ。油抜きした揚げを「煮る」「ねかす」「煮る」というプロセスを繰り返し、この色を出すのに3日間かかるという。太皷谷稲成神社の参拝とあわせて、ひと味違う「おいなりさん」を味わいに訪れたい。
    この黒い油揚げに、醤油のうまみが凝縮している
  • spot 11
    島根県芸術文化センター「グラントワ」
    「28万枚の石州瓦の鎧」をまとった石見地方の芸術文化の殿堂
    赤い「石州瓦」は石見地方の特産。島根県西部の芸術文化の拠点となっているグラントワは、館内施設や催しも充実しているが、「建物そのものが芸術品」との評価が高く、その建物を見るだけでも訪れる価値がある。
    JR益田駅から約1km、市街地の一角にグラントワが威容を見せる。敷地面積3万6000平方メートル、延床面積1万9000平方メートルを誇る巨大な施設だ
  • spot 12
    匹見峡
    自然に包まれた美しい峡谷で、都会の喧騒を離れてリフレッシュ
    益田市の奥深い山中にある匹見峡(ひきみきょう)は、山陰地方で屈指の大峡谷。「前匹見」「表匹見」「裏匹見」「奥匹見」の4エリアは、それぞれ違った表情をもつ。都会を離れ、リフレッシュするには絶好の「大自然スポット」だ。
    巨岩と絶壁を縫って流れる美しい渓流に、心も洗われる(写真は表匹見の「屏風ヶ浦」)
  • spot 13
    島根県立万葉公園
    柿本人麻呂の世界と万葉ロマンに浸れる風情豊かな公園
    万葉の大歌人・柿本人麻呂(かきのもとのひとまろ)が最後を迎えたとされる鴨島跡を望む丘に広がる万葉公園。そこでは人麻呂の歌を刻んだ石碑が並び、万葉植物を万葉歌とともに紹介。万葉ロマンにあふれている。
    恋の歌碑が点在する「人麻呂展望広場」。柿本人麻呂の石見相聞歌もある
  • spot 14
    高津柿本神社
    万葉の大歌人・柿本人麻呂を祀り、「人丸さん」と親しまれる神社
    「万葉公園」が広がる丘陵地の一角に、万葉の大歌人・柿本人麻呂(かきのもとのひとまろ)を祀る神社が立つ。人麻呂は天武、持統、文武天皇に宮廷歌人として仕え、大宝年間に石見国府の役人として石見に下り、石見相聞歌などを残した。そして724年(神亀元年)、石見高津の鴨島で逝去したと伝わる。聖武天皇の勅命によって鴨島に人麿(人麻呂)を祀る人丸社が創建。しかし1026年(万寿3)の大地震で鴨島は海底に沈み、御神体が高津松崎の地に漂着。地区民がそこに人丸社を再建し、長年信仰を集めたが、1681年(延宝9)に津和野藩主がこの地へ移して、本殿、拝殿、楼門を建立した。石段を登ると、「人麿社」の扁額のかかる楼門が迎えてくれる。宝物館には天皇や親王、公卿が詠んだ和歌などが収蔵される。学問の神として知られるが、人麿(人麻呂)は「人丸(ひとまる)」とも表記され、「人産まる」「火止まる」を連想させることから、安産や火防にもご利益ありとされる。また、恋歌を多く残した人麿にあやかって、恋愛成就を願う人も多い。全国にある柿本神社の本社とされ、「人丸さん」と呼ばれて親しまれている。
    鳥居の奥の石段の上に重厚な楼門が威風堂々と立つ
  • spot 15
    益田市立雪舟の郷記念館
    水墨画を大成した画聖・雪舟をしのぶ「雪舟山水郷」の中核施設
    水墨画で知られる室町時代の禅僧・雪舟(せっしゅう)は、石見の国、とりわけ益田に深い縁をもつ。そして益田の東光寺で晩年を過ごし、そこで最後を迎えた。その東光寺は戦国時代に焼失したが、江戸時代に後継寺院として「大喜庵(たいきあん)」が再建され、そこに雪舟の墓と伝わる雪舟廟がある。一帯は歴史文化ゾーン「雪舟山水郷」として整備され、大喜庵に隣接する「雪舟の郷記念館」が中核施設となっている。記念館では、雪舟や益田の歴史に関する資料などを収集・展示。雪舟が描いた数少ない人物画のひとつ『益田兼堯(かねたか)像』(国の重要文化財)の真筆も収蔵し、年2回公開展示している。兼堯は、中世に益田の領主だった益田家の15代当主で、1478年(文明10)頃に雪舟を益田に招いた人物だ。また記念館には、雪舟が描いた『花鳥図屏風』をヒントにつくられたという「八景園」という庭もある。そして、この記念館から車で数分の場所に、雪舟が作庭した「雪舟庭園」が見られる萬福寺や医光寺があるので、あわせて訪ねてみたい。
    雪舟の墓(雪舟廟)がある大喜庵に隣接して記念館が立つ。建物は雪舟が修行した中国の天童寺(てんどうじ)を模したものという
recommend spot

人気スポット

recommend spot

旅のヒント

  1. その1

    津和野へ車で行く場合は、中国自動車道六日市ICまたは鹿野ICから約35㎞、車で約45分。高速道路のICから遠く、山間部を走るので注意。

  2. その2

    公共交通機関の場合はJR山口線を利用。首都圏からなら、東京(羽田)から飛行機で山口宇部空港か萩石見空港まで行き、空港からはレンタカーを使うのが便利。

  3. その3

    津和野から益田へは、車なら一般道で約35㎞、約45分。鉄道ならJR山口線で約40分。

  4. その4

    津和野駅から主要スポットへは徒歩圏内だが、レンタサイクルで巡るのもおすすめ。

  5. その5

    鉄道ファンなら見逃せないのがJR山口線の新山口~津和野を走る「SLやまぐち号」。運行日はウェブサイトで確認しよう。

recommend spot

関連記事

記事一覧

島根のその他のエリア

+ -
back
open

津和野・益田エリア