島根

松江城周辺

AROUND MATSUE CASTLE

茶名人・不昧公ゆかりの城下町は、風雅な文化が残る水の都

江戸時代に城下町として栄えた松江。威風堂々とそびえ立つ国宝「松江城」を中心に、お堀と川が網の目のように張り巡らされた風情ある街だ。歴史ある建物や寺院などの見どころが豊富で、なかでも松江にお茶文化を広めた松江藩松平家7代藩主・不昧公(ふまいこう)こと松平治郷(はるさと)ゆかりの茶室や、茶道具が残る美術館にはぜひとも足を運んでみたい。また、小説家・随筆家で日本民俗学者であった小泉八雲(ラフガディオ・ハーン)の旧宅や記念館を訪ねれば、外国人の目に明治時代の日本がいかに魅力的に映ったかがわかる。郷土料理では、日本海と汽水湖である宍道湖から水揚げされた魚介が楽しみ。「日本三大そば」のひとつに数えられる「出雲そば」の店ほか、茶文化が根付く街らしく老舗の和菓子店も多くある。街のいたるところから眺められる宍道湖は、夕日の絶景スポット。温泉も豊富で、中心地に近い「松江しんじ湖温泉」や、美肌の湯として知られる「玉造温泉」で旅の疲れを癒やしたい。

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エリアの見どころ

  • spot 01
    松江城
    宍道湖を一望できる国宝天守を擁する平山城
    国内に現存する12天守のひとつであり、さらに国宝に指定された5城のひとつ。松江藩主の居城として堀尾吉晴によって築城された。松江市街地北部の小さな山の上にあり、天守の最上階からは市内と宍道湖を含む景色を360度見渡すことができるため、絶景スポットとしても人気がある。
    全国に現存する12天守のなかで平面規模では2番目、高さでは3番目を誇る
  • spot 02
    松江神社
    松江の発展に貢献した人々と徳川家康公を祀る
    松江城山二の丸に立つ洋館「興雲閣」の横にあり、松江藩松平家の初代・直政ほか、大名茶人として知られる不昧公(ふまいこう)こと7代藩主・治郷公(はるさと)、松江開府の祖・堀尾吉晴、さらに徳川家康を祀る。1897年(明治10)、西川津町に直政公を祀る「楽山神社」として創建され、のちの1899年(明治32)年に家康を祀る「松江東照宮」とともにこの場所に移された。このときより社名を「松江神社」に改めた。本殿、東照宮の特徴でもある権現造りの拝殿、手水舎など江戸時代のまま残る。特に1639年(寛永16)建造の手水舎は、歴史的にも貴重なものとなっている。松江城が国宝となる決め手となった、祈祷札が発見された場所でもある。境内には、開運、商売繁盛などのご利益があるとされる「福徳稲荷神社」も祀られている。
    江戸時代の貴重な建造物が残る境内
  • spot 03
    興雲閣
    淡いグリーンが美しい松江城内の洋館
    1903年(明治36)、松江市が工芸品陳列所として建築したもので、1969年(昭和44)に島根県有形文化財(建造物)に指定されている。淡い緑色と華麗な装飾が美しい建物は当初、明治天皇の行在所(あんざいしょ)として使われる予定だった。行幸は実現しなかったが1907年(明治40)、皇太子(のちの大正天皇)の山陰道行啓時の御旅館としての役割を果たした。その後、1909年(明治42)に「興雲閣」へと名称が変わり、松江市の各種の展覧会や会合などにも利用された。1973年(昭和48)からは、博物館「松江郷土館」としても活用されたが、いったん閉館し、機能は松江歴史館へと引き継がれた。建物そのものの歴史的な価値を生かした活用を目指し、2013年(平成25)~2015年(平成27)にかけて整備を行った。天守と擬洋風建築の対比も興味深く、松江城を訪れたらぜひ立ち寄りたいスポット。1階のカフェ「亀田山喫茶室」では、松江城のある「亀田山」にちなんだコーヒーや自家製スイーツを味わえる。明治の貴重な建造物を活用した趣ある空間で、散策の合間のカフェタイムを過ごしてみてはどうだろう。
    明治時代に建てられた擬洋風建築
  • spot 04
    塩見縄手
    松江随一の城下町の面影が残る伝統美観地区
    国宝松江城の築城とともに造成された北側の堀に沿う500mほどの通り。小泉八雲旧居をはじめとした武家屋敷が残っており、松江で最も城下町らしさが漂っている場所。見どころが多く点在し、周辺に土産物店や甘味処などもあって、松江市内観光のハイライトのひとつ。
    松江城の北側、堀川沿いにある閑静なエリア
  • spot 05
    武家屋敷
    塩見縄手の名前の由来となる武士が暮らした屋敷
    江戸期の城下町・松江の面影を今に伝える屋敷。建物の前に広がる「塩見縄手」は、松江城を築城した堀尾吉晴が内堀とともに並行する道路と、侍屋敷を造成してできた通り。この武家屋敷に一時期暮らした塩見小兵衛(しおみこへえ)がのちに異例の栄進をしたことから、これを讃えて名づけられたものだ。屋敷は主屋(しゅおく)、長屋門、塀などからなり、小兵衛のほかにも500-1000石程度の武士が入れ替わり暮らしていたという。現在の武家屋敷は解体調査や資料によって復元されたもの。式台玄関(来客用玄関)がある表側と、裏側の私生活の部分では造りや材料が明確に区別され、公私を厳しく分けた武家の暮らしぶりがうかがえる。飾りを省いた素朴な造りの築山式の庭園からは、質実剛健の気風が見てとれる。式台玄関や座敷で迎えてくれる人形もリアルで、ドキッとするほどだ。
    当主が来客を迎える座敷は、格式を重んじた造り
  • spot 06
    小泉八雲旧居 (ヘルン旧居)
    小泉八雲が暮らした当時のたたずまいがそのまま残る家
    『耳なし芳一』や『雪女』などの『怪談』の著者として有名な小泉八雲こと、ラフカディオ・ハーンが松江滞在中の5か月間を過ごした家。八雲の居間、書斎、セツ夫人の部屋などと、これらを取り囲む庭が一般公開されている。
    小泉八雲と妻のセツが5か月間をここで暮らした
  • spot 07
    小泉八雲記念館
    小泉八雲の生涯と作品、思考までグラフィックと映像で知る
    小泉八雲の生涯と作品や事績、遺愛品などを紹介する資料館。『怪談』の著者であり、西洋人の視点から見た明治時代の日本を紀行や随筆で紹介する作家として知られているが、それだけにとどまらない多彩な面を知ることができる。1階は3つの展示室に分かれ、展示室1では八雲の生涯を紹介。展示室2では、事績や思考の特色を「再話」「ジャーナリズム」「いのち」「八雲から広がる世界」など、複数の切り口から描き出している。松江出身の俳優・佐野史郎氏の朗読と、ギタリスト・山本恭司氏による、山陰地方の5つの怪談はぜひ聴いてみたい。八雲に関するさまざまな企画展示を行うのが、展示室3。2階には、八雲の著作や関連書をそろえたライブラリーがあり、自由に閲覧できる。グラフィックと映像を駆使した展示はわかりやすく、これまで知らなかった八雲の人柄や魅力も再発見できそうだ。
    直筆原稿や愛用品以外に家族写真の多いことから人柄がしのばれる
  • spot 08
    八雲庵
    独特の香りと食感が持ち味の「出雲そば」を堪能する
    「日本三大そば」のひとつに数えられる出雲そばの特徴は、見た目が黒っぽいこと。これは、穀の付いたそばの実をそのまま挽く「挽きぐるみ」という製粉方法で作られるため。香りと栄養価が高く、独特の風味と食感を味わえる。「小泉八雲旧居」の隣にあるこの店では、毎日店内で手打ちする本格出雲そばを提供。初めてなら、赤い器を重ねた「割子(わりご)そば」を食べてみたい。つゆを直接そばにかける独特な食べ方は、江戸時代にそばを重箱に入れ、弁当として携えたことが起源といわれる。名物の「鴨なんばん」のほか、食後には出雲が発祥とされる「ぜんざい」や、季節の和菓子も楽しみだ。武家屋敷を改装した座敷と庭は風情たっぷり。池に泳ぐ錦鯉は、金色の鯉が縁起がいいと評判になっている。
    定番の「三段割子」(840円)。好みの薬味を載せ、上からつゆをかける
  • spot 09
    ぐるっと松江堀川めぐり
    屋根付きの小船で水の都・松江をのんびりめぐる
    国宝松江城を囲む約3.7kmのお堀をめぐる観光遊覧船。松江城の天守閣をはじめ、武家屋敷の黒塀が並ぶ塩見縄手、現在の市街地、水鳥が戯れる自然いっぱいのエリアをめぐる約50分は癒やしのひととき。ユーモアたっぷりの船頭さんのガイドに耳を傾けながら楽しみたい。
    歴史、市街地、自然、3つの松江の景色を楽しめる
  • spot 10
    田部美術館
    不昧公(ふまいこう)ゆかりの茶道具や、出雲地方の美術工芸品を紹介
    島根県知事や衆議院議員も務めた田部長衛右門朋之が、田部家伝来の美術品を公開する美術館として創設。不昧公ゆかりの品々や、楽山焼、布志名(ふじな)焼をはじめとした出雲地方の美術工芸品を展示し、季節に合わせた茶道具も紹介する。
    松の板の傾斜天井が開放感を感じさせるエントランスロビー
  • spot 11
    月照寺
    四季折々の花も楽しみな松江藩主・松平家の菩提寺
    徳川家康の孫にあたる初代・直政から9代・斉斎(なりよし)までの墓がある、松平家の菩提寺。花の寺としても知られ、冬はサザンカとツバキ、春の桜のほか、初夏のアジサイ、晩秋の紅葉も美しい。
    境内で最も大きな霊廟は、初代藩主・直政のもの
  • spot 12
    明々庵
    松江城を望む静寂の地に立つ不昧公(ふまいこう)ゆかりの茶室
    不昧公の号で知られる松江藩第7代藩主・松平治郷(はるさと)は、江戸時代を代表する大名茶人。1779年(安永8)、その不昧公の指示によって藩家老の屋敷内に建てられた茶室。没後150年の記念事業により1996年(昭和41)、現在の場所に移築された。
    茅葺き、入母屋(いりもや)造りの茶室
  • spot 13
    普門院 (観月庵)
    不昧公(ふまいこう)が月を愛でたと伝わる茶室が残る寺院
    松江城を築城し、城下町を築いた堀尾吉晴が創建した寺院。境内にある茶室「観月庵」は、寺がこの地に移されてから1801年(享和元)に建てられたもの。東の空から昇る月を愛でるための「観月窓」があり、大名茶人の不昧公(ふまいこう)も好んだと伝わる。
    「観月窓」からは池に映る月も眺められる
  • spot 14
    風流堂 京橋店
    不昧公が考案したといわれる名物茶菓子「山川」
    茶の湯の文化が土地の人々の生活にも根付き、京都・金沢と並んで日本の「三大和菓子処」といわれる松江で土産といえば、なんといっても和菓子。なかでも注目されるのが、「日本三銘菓」のひとつとされる銘菓「山川」。江戸期の大名茶人として名高い松平不昧(ふまい)公が考案したとされる落雁だ。茶席の定番菓子「落雁」は、「打ちもの」と呼ばれる干菓子を代表する伝統的な和菓子で、「日本三銘菓」はすべて落雁。落雁といえば硬いイメージだが、「山川」は食感がやわらかく、しっとりした口あたりで、不昧公が好んだ和菓子として今日まで受け継がれる「松江三大銘菓」のひとつともされている。その「山川」を製造販売する老舗の和菓子屋が、創業1890年(明治23)の風流堂。「山川」と2代目創製の饅頭「朝汐」を2大看板商品として「山川・朝汐本舗」を称し、松江市内に寺町本店、矢田店(本社工場)そして京橋店と3店舗を展開している。京橋のたもとにある「京橋店」は京店商店街がすぐそこで、松江城観光や散策ついでに気軽に立ち寄るのに便利だ。
    不昧公の御歌に由来して名付けられた「山川」は、しっとりとした口あたりの落雁。赤と白が対になっている(赤白各1枚入り972円)。
  • spot 15
    宍道湖
    美しい夕暮れの風景で知られる松江の町の繁栄を支えた湖
    日本で7番目に大きい湖で、淡水と海水が混ざる汽水湖のため魚介類が豊富。東西に長い楕円形で、西は出雲平野に面し、東端に松江市街地が位置する。国宝松江城も宍道湖の水を活かして造られ、「水の都」と呼ばれる趣の源となっている。日本有数の夕日の名所でもある。
    湖に浮かぶ嫁ケ島は松江を象徴する風景のひとつ
  • spot 16
    宍道湖観光遊覧船
    早朝とサンセット、どちらも楽しみな1時間の宍道湖クルーズ
    遊覧船「はくちょう」に乗り、約1時間かけて宍道湖を巡るクルーズ。大橋川の第1乗船場を出発したあと第2乗船場を経由し、くにびき大橋、宍道湖大橋をくぐり宍道湖へ。城下町松江の風情ある町並みや、島根県立美術館を眺めながら、湖に浮かぶ嫁ケ島近くで折り返す。宍道湖の風物詩でもある早朝の「しじみ採り」を間近で見ることができるのが、「爽朝クルージング」。朝もやのなかの神秘的な風景と、朝の爽やかな空気も楽しめる。周囲を真っ赤に染めるサンセットを見るなら、最終便の「サンセットクルージング」がおすすめ。日没時刻に合わせ、季節により出航時間が変わるので事前に確認を。船内で地元の老舗料理店の食事を味わうこともできる(前日までに要予約)。車の場合は第1乗船場が、JR松江駅からは第2乗船場の利用が便利だ。
    湖まで出たら、ルーフデッキに出て景色を楽しみたい
  • spot 17
    ふじな亭
    文人たちが愛した名物料理をリーズナブルに味わえる店
    店内から宍道湖を一望できる和食処は、明治より続く老舗料理旅館「皆美館(みなみかん)」の直営店。伝統の味を本家よりお手頃な価格で味わえるのが魅力だ。ぜひとも食べてみたいのが、大名茶人として知られる不昧公(ふまいこう)こと、松平治郷(はるさと)が好んだ汁かけ飯がルーツといわれる、「鯛めし」。1888年(明治21)の創業時から伝わる料理は、鯛のそぼろと細かく刻んだゆで卵、おろし大根、ワサビなどを載せた彩り豊かなご飯に、出汁をたっぷりかけて食べるもの。初代料理長が考案し、松江に滞在した明治の文豪たちも愛した味だ。「鰻まぶし」や季節の創作料理も楽しみ。弁当のテイクアウトができるほか、売店では「鯛めしセット」をはじめとした、お土産にぴったりのオリジナル商品を販売している。
    明治時代の創業より、代々受け継がれてきた「鯛めし」
  • spot 18
    季節の風 藏
    宍道湖の恵みをたっぷり載せた丼メニューが人気
    宍道湖は海水と淡水が混ざり合う汽水湖。ここで獲れる多彩な魚介からスズキ、しじみ、うなぎ、シラウオなどが、「宍道湖七珍(しんじこしっちん)」に数えられる。なかでもしじみは漁獲高全国第1位を誇り、松江の代表的な味覚。そのしじみをふんだんに使った料理を味わえるのがこの店だ。大粒のヤマトシジミは、地元漁師から直接仕入れるもの。その出汁で炊いたご飯に、ご飯が隠れるほどむき身を載せた「しじみ丼」が人気だ。米は奥出雲産のコシヒカリ。米屋を営むご主人が、「もっとおいしいご飯を食べてもらいたい」と始めた店なので、ご飯そのもののおいしさも折り紙付き。白菜漬け、しじみの佃煮などの小鉢もすべて自家製だ。ほかにも、最上級の釜揚げちりめんをトッピングした「さざなみ丼」、自家製のスパイシーなタレをからめて焼いた島根和牛カルビを載せた「カルビ丼」など、地元食材を使ったメニューが豊富だ。
    1つの丼に100個以上のシジミのむき身を載せた「しじみ丼」(1540円)
  • spot 19
    松江フォーゲルパーク
    色とりどりの花と鳥たちに癒やされるテーマパーク
    国内最大級の広さを誇る温室ガーデン内には、一年中ベゴニアを中心とした花が咲く。3か所の鳥温室で世界中の鳥たちとふれあえるほか、フクロウやタカ、ワシの飛行ショー、ペンギンのかわいらしい散歩風景もぜひ見てみたい。
    ベゴニアだけでも約1000品種。花の苗も販売している
  • spot 20
    松江歴史館
    松江城の堀端にたたずむ風流な畳敷きの歴史館
    松江歴史館は松江城の東側、かつては松江藩の家老屋敷があった堀川沿いの一角にあり、武家屋敷風の外観が目をひく。立派な長屋門をくぐり、石畳を歩いて玄関へ。受付から展示室まで、館内は畳敷きになっている。展示室では、松江藩の歴史や城下の人々の暮らしなど、城下町松江の歴史や文化について、わかりやすい展示で紹介。松江藩松平家初代藩主の松平直政が「大坂夏の陣」の際に真田幸村から投げ与えられたと伝わる軍扇のレプリカや、幕末の名刀工・高橋長信(ながのぶ)の日本刀などの展示も目をひく。千利休が所持していたと伝わる約400年前のものという茶室や、松江藩家老屋敷の長屋(市指定文化財)も復元展示されている。また、館内にある喫茶「きはる」では、落ち着いた畳敷きの広間で、松江城の天守や日本庭園を眺めながら上生菓子(じょうなまがし)を抹茶とともにいただける。「現代の名工」に認定された伊丹二夫氏による和菓子作りの実演も見ることができ、たいへん興味深い。ミュージアムショップでは松江にちなんだ雑貨がそろい、土産探しも楽しい。展示室以外は無料で入館できるので、松江城見学とあわせて気軽に立ち寄りたい。
    堀川巡りの船が行く堀川に架かる北惣門橋の目の前に、重厚な長屋門を構える
  • spot 21
    神代そば
    小泉八雲ゆかりの地で味わう絶品の十割そば
    島根県のご当地グルメといえば、真っ先に挙げられるのが「出雲そば」。実は出雲そば発祥の地は松江の城下町で、起源は江戸時代の初期にさかのぼり、かの大名茶人で名高い松平不昧公(まつだいらふまいこう)もそば好きだったという。そして松江に数ある出雲そば店のなかでも評判の人気店といえば、創業70余年の「神代そば」。グルメサイトの島根県のそばランキングで1位に輝き、2年連続で「そば百名店」にも選出されている。民芸調の店は「いかにもそば屋」といった趣で、店でそば粉から手打ちする。島根県産を中心に北海道産など品質にこだわり、そば粉を厳選した十割そばは風味が強く、コシが強い。のどごしを楽しむというよりも、「そば本来の味を楽しむ」そばなのだ。そして「出雲そば」といえば、3段重ねの丸い朱塗りの漆器にそばが盛られた「割子(わりご)そば」。器のそばに薬味を載せ、出汁をかけて食べるのだが、そばそのものの風味を味わうためには、最初はそばだけ食べるのがおすすめ。店は小泉八雲記念館や八雲旧居のすぐ近く。武家屋敷が残る塩見縄手の散策がてら訪れるにも便利な立地だ。
    店のおすすめは「とろろ割子そば」(1380円)
  • spot 22
    八雲塗本舗やま本
    使い込むほど色鮮やかになる魅惑の酒器で一献
    創業は1887年(明治20)、135年の歴史を誇る「八雲塗本舗やま本」。松江藩のお抱え塗り師だった坂田平一(へいいち)が中国など国内外の漆器にヒントを得て、他の産地にはない独特の技法で「新しい伝統」を生み出した漆器が八雲塗だ。一般的な漆器とは異なり、顔料を加えた色漆(いろうるし)で文様を描いた上から、透漆(すきうるし)を塗り重ねて仕上げる。そして使えば使うほど塗り重ねた透漆の透明度が高くなり、色漆の文様が明るく鮮やかになっていくのが、八雲塗ならではの特色だ。また技法ばかりか、材料の漆にもこだわり、日本で使われる漆の約90%が中国産というなか、少なくとも上塗りと仕上げには貴重な国産天然漆を使うよう努めている。その八雲塗は、『古事記』でスサノオノミコトが詠んだとされる「八雲立つ」の歌にちなんで命名されたもの。品ぞろえは茶道具や弁当箱から箸、鏡まで幅広いが、注目の品は「八雲白檀(やくもびゃくだん)」と「八雲びいどろ」。漆器といえば普通木製がイメージされるが、「八雲びいどろ」はガラス製のシリーズだ。工房を併設するこの店では八雲塗の展示販売だけでなく、絵付体験も受け付けており、工房の見学もできる(要事前申し込み)。
    木を素材とした「八雲白檀 琥珀(こはく)」は各種カップがそろう。1客1万1000円~(カップと皿は別売り。セットで1万3200円~)
  • spot 23
    Scarab 別邸
    日本茶メーカー「千茶荘」がプロデュースする異色のカフェ
    京店商店街に面した隠れ家風の外観。店内はまるで異次元のような不思議な空間になっている。カウンター席のほか、趣向を凝らした和洋さまざまなスタイルの客席があり、自分好みの席を選べる。日本茶を製造販売する「千茶荘」本店の隣にある異色のカフェ「Scarab 別邸」は、千茶荘が「茶の湯文化」を若い世代にも親しんでもらいたいとプロデュースした「Scarab136」の姉妹店として、2013年(平成25)にオープン。「千茶荘」のほうじ茶や抹茶のほか、お茶ベースのオリジナルパフェやアイスなどのスイーツを味わえ、モーニングでは「茶粥セット」も食べられる。苔玉をモチーフに挽きたて抹茶を使用し、うまみやコクをしっかりと味わうことができる「盆栽パフェ」、抹茶の繊細な味を楽しめる「抹茶クレーププレミアム」などがおすすめだ。また、お茶ベースだけではなく、「季節ごとに変わるパフェ」や「わらびもちパフェ」などのメニューも充実している。この「スカラベ別邸」は松江に根付いた茶文化カフェとして、地元の人々が生活を楽しむための場所を提供することを主眼としている。いわゆる「観光客向けの店」ではないが、もちろん観光客も楽しめる。
    風変わりな格子の壁の外観が目をひくScarab 別邸。右隣に「千茶荘」の本店がある
  • spot 24
    加島茶舗
    茶文化が息づく松江の茶町に店を構える老舗茶舗
    茶大名として名高い松平不昧公(まつだいらふまいこう)のお膝元、古くから茶文化が根付く松江の、その名も「茶町」。松江城が築城される際、本丸まで石垣の巨石を引き上げた場所が現在の茶町で、築城工事で働く人々を励ますため茶屋を設け、餅と茶を振る舞ったことから「茶町」と呼ばれるようになったという。その茶町で、時代を超えたおいしい日本茶づくりに励むのが、1891年(明治24)創業の「加島茶舗」。各産地から仕入れた茶葉を、それぞれの個性、長所を生かしてブレンドするのが茶舗の役割だ。加島茶舗では老舗の名に甘んじることなく、茶文化を後世に残したいという切なる想いで、現代人の生活様式や好みも踏まえて最善のブレンドを追求。若き次期店主は、全国茶審査技術競技大会(全国闘茶会)で優勝した静岡の製茶問屋の主人のもとで修行を積み、山陰で唯一の茶師(茶審査技術)八段を獲得したという。その知識と技術で見極めた極上の日本茶は店内の「日本茶スタンド」でも味わえ、日本茶のテイクアウトもできる。また、客の好みや予算にあわせて、オーダーメイドの茶も提供している。
    店舗の外観は、いかにも日本の伝統的な茶舗といった風情を漂わせる
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旅のヒント

  1. その1

    ほとんどの見どころは徒歩で歩いて回れる範囲に点在する。しかし、城下町を囲む堀川を巡る乗り降り自由の遊覧船や、観光スポットを結んで走り1日乗車券、共通2日乗車券もあるレトロな車体のバス「ぐるっと松江レイクライン」などを利用すれば、より効率的で、さまざまな視点から景色を楽しむことができる。

  2. その2

    JR松江駅は城下町の南側、宍道湖と中海を繋ぐ大橋川の橋を渡ったところにあり、周囲には主だった見どころはない。松江市内と出雲大社や出雲市駅を結ぶ私鉄、一畑電鉄(通称ばたでん)の松江しんじ湖温泉駅のほうが松江城に近いので、出雲方面から松江に入るときにはこちらを利用したほうが便利。

  3. その3

    松江城を囲むお堀を約50分かけて一周する遊覧船は、乗車場が3か所あり1日乗り放題。江戸時代にタイムスリップした気分を楽しめる。

  4. その4

    とりわけ宍道湖の夕日が美しいとされるのは、城下地区から宍道湖大橋を渡った先、島根県立博物館や白潟公園がある湖畔。

  5. その5

    「玉造温泉」までは松江から車で約15分、路線バスで約30分。日帰り温泉施設や無料で利用できる足湯があり、松江の中心部を拠点とした日帰りでも楽しめる。

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